人に何かを教えるとき、自分が気持ち良くなりたいだけの話をしていないか。相手を置き去りにしていないか。この意識を頭の片隅に置いておくだけで、あなたのアドバイスの質は高まるでしょう。
良い指導者は命令せず
「もっと知りたい」と思わせる
教える側が「ああしろ、こうしろ」「こうしなきゃダメだ」と厳しく命令するスタイルを、私は完全否定はしません。強固な信頼関係があり、教わる側が全幅の信頼を置いている、あるいは「何でも吸収してやる!」という凄まじい気概があるなら、成立する関係です。一流スポーツ選手の世界などでは、そうした厳格な師弟関係もしばしば見られます。
しかし、それは極めて特殊な世界の話です。一般的な上司と部下、先輩と後輩、先生と生徒といった関係では、絶対的な押し付けは通用しません。そうした環境で重要なのは、教える側がいかに相手の関心を引き、「もっと知りたい、身につけたい」と思わせるかです。
『一流を支えるトレーナーの最強の教え方』(清水 忍、幻冬舎)
「教える力」のある人は、相手の興味に火をつけ、気持ちを盛り上げるのが非常に上手です。決して派手なパフォーマンスや強制はしません。静かに相手の心に入り込み、気がついたときには相手が「そのこと」を好きになり、次のステップへ進みたくてたまらなくなっている――。これは、一流のセールス担当の手法に似ています。
優秀なセールス担当は、ガツガツしていません。むしろ淡々としていて「買ってくれてもくれなくても、こちらとしてはどうでもいいんですけどね」的な雰囲気を醸し出していることが多いのです。
考えてみてください。「これを買ってください!」「買わないと損ですよ!」と叫ばれても、自分が欲しくなければ買いませんよね。強要されればされるほど、逃げたくなるのが自然です。
優秀なセールス担当は「相手にそれを欲しいと思わせる」能力に長けています。指導もまったく同じです。「やらなきゃダメだ」と押し付けるのではなく、相手が自ら「もっと教えてほしい」と身を乗り出してくるように導く。そんな空気を作れる指導者こそが、真の「教える力」を持った人だと私は思っています。







