写真はイメージです Photo:PIXTA
相手のために熱心にアドバイスしたつもりでも、相手が欲しがっていなければ「いらないお土産」と同じである。知識や熱意を押しつけず、「もっと教えてほしい」と思わせるには何が必要なのか。※本稿は、パーソナルトレーナーの清水 忍『一流を支えるトレーナーの最強の教え方』(幻冬舎)の一部を抜粋・編集したものです。
熱心でレベルの高い指導が
万人に受けるとは限らない
30代を過ぎ、フィットネスクラブのトレーナーとして自信を深めていた頃のことです。私はある店舗に赴任したのですが、そのときの先輩トレーナーたちの動きに呆れてしまいました。
「特定客と世間話ばかりして、ちっとも指導していないじゃないか」
若く生意気だった私は、先輩たちに指導の手本を見せてやろうと張り切りました。フロアにいる約20名のお客様1人ひとりに、3分ずつ、1時間かけてみっちりと「高レベルな指導」をして回ったのです。
数日後、「今度来た清水さんって、本当にすごいね」という好評が耳に届き、私は有頂天になっていました。当事者の耳には良い噂しか入って来ないものです。ところが、1週間後に支配人に呼び出され、衝撃の事実を告げられます。
「清水さんに、共通のクレームが出ています」
言葉遣いも態度も良好だったはずです。理由がわかりません。支配人が口にした内容はこうでした。
「今度のトレーナー、うざい」
憤懣やるかたない思いでした。「これほど高度な指導をしているのに、うざいとは何事だ。レベルの低い客だ」と声に出して言ってしまいました。しかし、この発言そのものが、私本位な独りよがりな指導の象徴のようなものであったことに、後に行動心理学を学ぶ過程で気づかされました。
衝撃的な事実でしたが、「ジムに来るすべての人が、本気でトレーニングをしたいわけではない」ということを知ったのです。
ただ仲間に会いたくて来ている人、なんとなく痩せたいと考えているだけの人、恋人に付き添って来ているだけの人。彼らの「温度感」を無視して、こちらの「高い熱量」を押し付けるのは、相手にとってはただの迷惑行為だと知ったのです。
相手のニーズを推し量らず、やみくもに熱意をぶつけるのは自己満足になってしまうのかもしれません。
最初にやるべきは
相手の温度感を探ること
ビジネスの世界でも同じような状況を見かけます。レベルが上がるほど、「方法論」よりも「あり方」などを重視するようになるのではないでしょうか。そういう高い温度感のトップセールスの先輩が「なぜこんな楽しい仕事に熱くなれないんだ!」と後輩を叱る場面を見かけます。
しかし、後輩はトップの世界で活躍したいという熱さではなく、「とりあえず今月の売上を立てたい」という温度感かもしれません。
この場合、高次元の「あり方」を説くよりも、まずは相手の温度感に合わせ、即効性のある「方法論」から教え、売れた!という経験をたくさんさせる。先輩にしてみると、「方法論」では根本的な改善にならないということはわかっていると思いますが、温度の低い後輩にとってはそこから徐々に温度を上げていくのが、正しい手順なのです。
つまり、温度が違いすぎると相手にはむしろ響かないのです。







