ビジネスの世界では「話し方」一つで大成功を手にすることもあれば、大損失を被ることもあります。ただし、口がうまいからと言って仕事ができるわけではなく、むしろ口下手の方が結果を出すケースも少なくありません。ビジネスで求められる実践的「話し方」とは?この特集ではあなたの「話し方」を劇的にアップデートする書籍を厳選しました。今回は『部下のやる気を引き出す上司のちょっとした言い回し』の中から、上司が知っておくべき部下にやる気と気づきを与える伝え方をお届けします。(ダイヤモンド編集部編集長 山口圭介)
一生懸命やっているけれど
結果の出ない部下への伝え方とは?
「週刊ダイヤモンド」と「ダイヤモンド・オンライン」を運営するダイヤモンド編集部において、管理職となるのは「副編集長」からですが、この副編集長という立場はなかなかに厄介です。私が「週刊ダイヤモンド」の記者だった頃は、極論を言えば、現場取材に専念し、ネタさえ取ってくればある程度評価されました。
ところが、副編集長になると、雑誌の顔である数十ページにおよぶ第一特集を取り仕切ることになります。いいネタを取ってくるのはもちろん、いかに売れるコンテンツに仕立てるかも重要になってきます。徹底的な現場取材、覆面座談会のセッティング、ランキングや図表の作成、イラストの発注、表紙デザインの発案などなど、編集部員をマネジメントしつつ、多岐にわたる業務を差配しなければならず、求められる能力はガラリと変わります。
私が副編集長になって特に苦労したのが部員のマネジメント(今も苦手で苦労しています…)。結果が出ずにもがいている部員をうまくサポートできなかったり、モチベーションが低下している部員にきつく言いすぎたりと、振り返ると後悔ばかりです。
部下との向き合い方に悩んでいる管理職にピッタリな書籍が、『部下のやる気を引き出す上司のちょっとした言い回し』です。部下への「伝え方」「頼み方」「褒め方」「聞き方」「叱り方」など、すぐに使える150フレーズを紹介しています。
例えば、一生懸命やっているけれど、結果の出ない部下への伝え方。著者の吉田幸弘氏は「結果のなかなか出ない部下に対して叱咤激励し、奮起させようとしても逆効果になってしまいがちです」と指摘。そのうえで、三つのポイントを意識することが大切と説きます。
(1) 一生懸命やっていることをねぎらう
一生懸命行動していないのなら厳しくする必要はありますが、そうでないのなら、まずはねぎらいましょう。そのうえで、どうすればいいか一緒に考えていくようにしましょう。
(2)上司が自己開示することで安心感を与える
結果のでない部下は怒られたくないと思って「がんばります」だけで済ませてしまいがちです。そこで上司は自らのスランプ経験を自己開示するのです。人は自己開示されると、その相手に安心感を抱きます。
(3)人ではなく、「モノ・事象」に焦点を置いた聞き方をする
なぜできないのかという言い方は、人に焦点を当てています。言われたほうは責められていると感じます。その場をどう逃れようかしか考えなくなります。一方、「何が問題になっているのか」「できないのは何が要因か」と言われると、モノ・事象が対象になります。責められていると感じないのです。
これらを踏まえて、吉田氏は以下のようにNGフレーズとOKフレーズを挙げています。
✕ →「営業は結果がすべてだからな。もっと回ってこい」
✕ →「なぜ、できないの?」
◯ →「いつもがんばってくれているね。昔、俺もやってもやっても営業が取れない頃があったんだけど、どこが困っているのかな?」
◯ →「何が問題になっているのかな?」
『部下のやる気を引き出す上司のちょっとした言い回し』の第6章では他にも、
・成績が悪い部下
・成績はトップでも、もっとチームワークを意識してほしい部下
・なかなか成長してくれない部下
・中身がイマイチな企画書をつくってきた部下
・年上で経験もあるが、もう少しがんばってほしい部下
・次世代のリーダー候補であり、周囲に目を向けてほしい部下
・期日どおりに仕上げてくれない部下
・同じ失敗を何度も繰り返す部下
・意見ばかりで動かない部下
・反論するけど具体的な意見がない部下
など、さまざまなタイプの部下に対して、効果的な一言を紹介しています。
さらに『部下のやる気を引き出す上司のちょっとした言い回し』の他の章では、
・部下の言いたいことを上手に引き出す聞き方
・部下のプライドをくすぐる上手な褒め方
・部下が気持ちよく動いてくれる頼み方
・部下を立ち直らせる励まし方
・部下が行動を改善してくれる効果的な叱り方
といった実践的なコミュニケーション術を開陳しており、管理職にとっての金言がずらり。ぜひご一読ください。
『部下のやる気を引き出す上司のちょっとした言い回し』の本文はこちら
第1章 部下が話しやすくなる相槌の打ち方/第2章 部下の言いたいことを上手に引き出す聞き方
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