計算すると、Aさんの伝達量は「54」ですが、Bさんは「56」となります。知識で劣るBさんの方が、結果として相手に多くのことを伝えられているのです。そのため、指導者としてはBさんの方が優れている、と言えるでしょう。

 たとえばここにさらにCさんがいるとします。Cさんは誰もが認める「100点満点」の神業的な知識と実技能力を持っています。しかし、極端に口下手であったり、伝える意欲が欠けていたりして、伝える能力が10%だとします。いわゆる「宇宙人」すぎて何を言っているか理解不能な状態です。

 この場合、100×10%=「10」しか伝わりません。素晴らしい実力があっても、相手にはほとんど教えていないことになってしまいます。それでも私たちは、このような指導者を「すごい」と賛美しがちではないでしょうか。

「知識が豊富であること」と「教えるのがうまいこと」はまったく別の能力です。指導者に知識と実技能力が必要なのは当然ですが、それと同じくらい「伝える能力」が不可欠であることをご理解いただけると思います。

知識・実技と伝える能力の
2つを並行して伸ばしていく

 私はトレーナーを目指す学生たちと、よくこんな会話をします。

学生:「私はまだ知識不足で自信がないので、指導者にはなれません……」

私:「では、一体どれだけの知識を身につけたら自信が持てるのですか?」

学生:「…………」

私:「君は腕立て伏せのフォームは綺麗にできているよね。なら、そのやり方を誰よりも上手に中学生に教えられる人になればいいじゃない」

 みなさんも、小学生に算数を教えるだけの知識はあるはずです。高等数学の知識がなくても、簡単な算数なら教えられますよね。大切なのは、それを「上手に教えられるか」であり、どれだけ高等な知識を持っているかではないのです。

 多くの人が「指導するにはもっと高いレベルの知識が必要だ」と勘違いしています。もちろん相手のレベルが高ければ相応の知識がいりますが、今のあなたが持っている知識を求めている人はたくさんいます。