運転手の心を削る
乗客の「無言の圧力」

 言葉を交わさなくても、運転手を傷つける態度は他にもある。咳払い、ため息、舌打ち。渋滞にハマり、到着までに少し時間がかかりそうなとき、後部座席から聞こえてくる。

 予定通りに進まないことから、社会的地位が高そうな人に、後部座席で「地団駄」を踏まれたこともある。わざとではなく無意識のうちに体が動いているのかもしれないが、運転している側の心はじわじわと削られていく。

 ただし、舌打ちが聞こえたときに、ルームミラーで後部座席をちらっと見ると、仕事関係の連絡にイラついているだけの人もいる。同様に、タクシー運転手に対する当てつけではなく、単に疲れてため息をついている場合もある。

 自分に向けられたものではないと分かれば、それはそれでホッとする。

 これに対し、乗客と直接言葉を交わすケースでは、曖昧な指示にモヤモヤすることがある。例えば、ルートを確認したときに「最短で」とだけ言われる場合だ。

 こちら側としては、「時間」と「距離」のどちらで最短を目指すべきなのか、もう一言だけでも教えてほしい。渋滞が起こりやすいエリアでは、遠回りした方が時間を短縮でき、「最短距離」を目指すと乗車が長引くことがあるためだ。

 そこで詳細を確認すると、「最短で」と繰り返されたり、「そのくらい気持ちを汲んでほしい」とお叱りを受けたりすることがある。

 他にも、「ルートは任せる」と言われて走り出すと「ああ、この道を選んだのか」とガッカリされることがある。

 さらに、「とりあえず真っすぐで」と言われて直進していると、突然「今ここで曲がって!」と強い口調で指示されることもある。飲食店などに向かう場合、その店の正式名称ではなく、地元民しか知らない愛称で指示されることもある。

 ドライバーは超能力者ではないから、もう少しコミュニケーションを取ってもらえると助かるのだが……。