自分が決めたやり方に、部下が修正を求めてくる。内容を確かめる前に、自分の判断が疑われたという感情が動く。構想を力強く語れることと、自分の見落としを指摘された場面で冷静に振る舞えることは、同じ能力ではない。
ナサニエル・ファストらが2014年に発表した論文『知らないままでいようとする管理職――管理職の自己効力感、自我防衛、部下の発言への嫌悪』は、この問題を扱っている。自己効力感とは、自分はその役割を果たせるという感覚だ。
実験では131人に航空会社の管理職役を与え、自分の計画に整備責任者が変更を提案する場面を読ませた。管理職としてうまくやれている設定と、自信が揺らいでいる設定を設け、反応を比べている。部下について与えた情報は同じである。
自信が揺らいでいる設定だけを与えられた参加者は、提案してきた部下の能力を低く評価した。意見を求める姿勢も、提案を実行する意欲も弱まった。自分の大切な価値観を確かめる作業を挟むと、この反応は和らいだ。研究は、自尊心を守ろうとする心理が、部下の声を避ける反応に関わることを示した。
提案した部下の能力を
低く評価した理由
この結果の嫌なところは、改善案を断るだけで終わらない点にある。提案した部下の能力評価まで低くなった。職場で同じことが起きれば、社員は案が採用されるかどうかに加え、発言した自分がどう扱われるかまで考えなければならなくなる。
仕事の手順を変えたい。そう申し出ただけなのに、上司との関係を危険にさらす。ここで部下が引き受けるのは、案の出来とは無関係な負担だ。提案を出す前に、上司が傷つかない言い方を探し、誰の発案にすれば通るかを考える。改善に使うはずの頭を、人間関係の調整に使わされるのである。
上司の側から見ると、話はひっくり返る。
部下が示した不備は、自分が見逃していた不備でもある。そこで、自分の判断を見直すより先に、提案してきた部下の能力を低く見積もる――。実験で確認されたのは、まさにそうした反応だった。自信が揺らいだ管理職役の参加者ほど、同じ提案をした部下を低く評価し、その意見を取り入れようとしなくなった。
強烈なひと言に震える…
マスクが嫌う管理職の特徴とは
2018年4月17日、米メディアのElectrekが掲載した、モデル3の増産をめぐるマスクの社内メールを読むと、管理職に何を求めているのかがはっきりする。







