人の話を聞いている最中、頭の中ではすでに「それは違う」「こうすればいい」と答えをつくっていないでしょうか。『聞く力は最高の知性である』の著者・山口拓朗さんによれば、聞き方は一つではありません。学ぶとき、育てるとき、怒っている人と向き合うとき。目的によって聞き方を変えることが、仕事にも人間関係にも効いてきます。
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「聞く力」は一種類ではない
会議でうまく発言する。
プレゼンでわかりやすく説明する。
初対面でも話題を切らさない。
私たちはコミュニケーション能力というと、つい「話す力」を考えます。
しかし、山口拓朗さんの話を聞いていて、
「その前に、そもそも何を受け取っているのか」
のほうが重要なのかもしれないと思いました。
私が毎朝5時55分から無料で行っている「1分朝活」は、心と行動を整えるための小さな習慣です。『奇跡が起きる毎朝1分日記』を書いたことをきっかけに続けているもので、月曜日には毎回、さまざまな分野からゲスト講師をお迎えしています。
今回来てくださったのは、『聞く力は最高の知性である』(SBクリエイティブ)の著者、山口拓朗さん。文章、言語化、コミュニケーションについて長く発信してきた山口さんが、今回あらためて注目したのが「聞く力」でした。
どれだけきれいな答えを返しても、相手の話を取り違えていたら意味がないからです。
山口さんは、聞く目的を「学習」「議論」「創造」「牽引」「信頼関係構築」「共感」「受け皿」という7つのモードに分けています。
面白いのは、
「いつでも同じように聞けばいいわけではない」
ということです。
学びたいなら、「なるほど」で終わらせない
たとえば、何かを学ぶとき。
「なるほど」
「勉強になりました」
と気持ちよく聞いて終わっても、翌日にはほとんど忘れてしまいます。
学ぶために聞くなら、
「本当にそうなのだろうか」
「それは具体的にはどういうことだろう」
「自分の仕事なら、どこで使えるだろう」
と問いながら聞く。
そして聞いたあとに、話す、書く、行動する。
実際に使えば、
「ここはうまくいった」
「ここは理解が足りなかった」
と次の疑問が生まれます。
つまり、
「聞く→アウトプットする→行動する→振り返る」
までやって、ようやく学びになります。
単に静かに相槌を打つことだけが「聞く力」ではないのです。
部下が話した瞬間に「答え」を返さない
では、人を育てるときはどうでしょうか。
ここでは聞き方を変える必要があります。
部下から、
「この仕事、どうすればいいでしょうか」
と相談された瞬間に、
「それはこうすればいい」
と答える。
上司にとっては親切ですし、早い。
でも、それを毎回続けていたら、部下はどうなるでしょう。
「困ったら上司に正解を聞けばいい」
という人になるかもしれません。
山口さんがいう「牽引モード」で大切なのは、すぐに答えを返さず、
「あなたはどう考えている?」
「何が一番問題だと思う?」
「どこまでは試した?」
と、本人の中にある言葉を引き出していくことです。
自分が白紙を持ち、その紙に相手自身の考えを書いてもらうような感覚で聞く。
正しい答えを持っていたとしても、それを先に書き込まない。
育てるときには、
「いい答えを言う能力」
以上に、
「相手が自分で考えられる余白を残す能力」
が必要なのだと思います。
怒っている人に「でも」はいらない
さらに難しいのは、相手が怒っているときです。
ひどく落ち込んでいる。
泣いている。
大きな失敗をして混乱している。
そんな相手を見ると、私たちはつい助けたくなります。
「こう考えたらいいよ」
「次はこうすればいい」
「でも、あなたにも悪いところはあったんじゃない?」
と、アドバイスや分析を始めてしまう。
しかし、このとき必要なのは「受け皿モード」かもしれません。
「今、そう感じているんですね」
と、まず相手の感情をそのまま置ける場所になる。
同意する必要はありません。
相手の言っていることを全部正しいと認める必要もない。
ただ、
「今、この人はこう感じている」
という事実を、急いで直そうとしない。
人は、受け止めてもらう前に正論を渡されると、その正論を受け取れないことがあります。
「また会いたい」は、話のうまさだけでは生まれない
山口さんの話で一番印象に残ったのは、聞くことの根底には「相手への興味」があるということでした。
聞くとは、音声を受信するだけではありません。
うなずく。
相槌を打つ。
表情を変える。
体を相手に向ける。
質問する。
全部、
「あなたの話に関心があります」
という発信でもあります。
今は、SNSでもリアルでも、
「自分のことを知ってほしい」
「自分の話を聞いてほしい」
という人があふれています。
だからこそ、
「あなたは、どんな人なんだろう」
と目の前の人に本気で興味を持てる人は、むしろ希少になっています。
次に誰かの話を聞くとき、
「どう返そう」
と考える前に、
「この人は、本当は何を話そうとしているんだろう」
と考えてみる。
会話の質は、こちらが話し始める前に、すでに決まっているのかもしれません。








