最も危険なのは
「否定から入ること」

 私が特に危険だと思うのは、部下の意見に対して否定から入ることです。

「なんでそんな意見が出てくるの?」

「それ、昔やってダメだったから」

「そんなやり方はあり得ない」

 こうした言葉です。

 部下が勇気を出して意見を言ったのに、最初の反応が否定だったらどうなるでしょうか。

 次から言わなくなります。

 特に前例主義の強い上司は、「以前うまくいかなかったから今回もダメだ」と、部下がなぜそう考えたのかを聞く前に結論を出してしまいます。

 もう一つ危険なのが、自分の価値観の押し付けです。

「仕事というのは、こういうものだ」

「普通はこうする」

「俺のやり方でやってくれ」

 上司本人は、自分の経験から正しいことを教えているつもりです。しかし、それはあくまで自分の経験や価値観から生まれた考えかもしれません。

 世代も、育ってきた環境も、担当している顧客も違えば、部下が違う考え方を持つのは当然です。

 それにもかかわらず、自分の考えをあたかも「組織全体の正義」であるかのように押し付けてしまう。

 これはアンコンシャス・バイアス、つまり無意識の思い込みとも関係しています。

 私自身、かつてまさにこれをやっていました。

 部下の話を聞くより、自分のほうが答えを知っていると思っていたのです。

 その結果、部下は自分で考えなくなり、私はさらに「どうしてみんな考えないんだ」と苛立つ。悪循環でした。

第5回記事<「中途入社で嫌われる人」が無意識に口にしている〈余計な一言〉とは?>は9月29日(火)午前7時30分に公開されます。前川孝雄氏をフォローすることで取材記事(全5回)をメールでお送りすることができます。

部下を変える前に
上司が変えるべき「4つの習慣」

 先ほどお話しした大失敗のあと、私は次の職場で、それまでと真逆のことをやろうと決めました。

 自分の意見を押し付けない。否定から入らない。まず話を聞く。

 すると、部下はそれまで私が知らなかったことをたくさん話してくれました。

「そんなことを考えていたのか」と驚くこともありましたし、私には思いつかなかった良いアイデアも出てきました。

 そこで「それ、いいね。やってみよう」と認めると、部下は自分から動き始めます。

 人に言われてやる仕事より、自分が「やりたい」と言った仕事のほうが、内発的な動機が働くからです。

 私は現在、押し付けを避けるための考え方を「コミュニケーションサイクル」として4つに整理しています。