理由3:過去の成功体験の強要

 第三の理由は、自らの偏った成功体験を部下に強要してしまう点です。

 自分は家庭を犠牲にしてここまでキャリアを築いてきたという強い自負がある人ほど、自分の働き方が唯一の正解だと考えて、部下にも同様の働き方を求めます。本人はタフさを誇っているつもりでも、チーム全体としては過剰な負担による離職率の上昇や生産性の低下を招きます。

 プレーヤー時代の成功モデルが、マネージャーとしてはむしろ組織に害をもたらす失敗モデルへと変わってしまうのです。

理由4:身近な人との信頼関係を築けない

 第四の理由は、信頼関係を築くための基本的なプロセスを軽視している点です。

 約束を守ること、相手の話を丁寧に聴くこと、感謝を言葉にして伝えること、自分の都合ばかりを相手に押し付けないこと。これらは職場であれ家庭であれ、人間関係において信頼を構築するための基本です。

 私たちは会社という組織に属する以前に、社会の最小単位ともいえる家庭というコミュニティに属しています。その家族に対してコミットメントを果たせず、信頼関係を築けない人物が、職場の多様なメンバーと中長期的な信頼関係を結ぶことができるのかは大いに疑問です(もちろん、家庭と職場での振る舞いが一致しない人もいますが)。

 私は、仕事と家庭の二者択一ではなく、その時々でバランスを取りながら、どちらも追求する「二兎を追う働き方」を目指すべきだと考えています。

社会構造の変化と個人の葛藤

 かつては祖父母と同居する多世代世帯の中で、仕事一筋で働く父親を周囲が支える構造が成立していた時代もありました。

 しかし現代では、核家族化と共働き世帯が一般化し、個人の働き方を取り巻く環境は激変しています。社会制度や常識がその変化に追いついていない面も多々あります。そこを個人の努力と精神論だけで乗り切れというのも無理な話です。長時間労働を前提とした評価制度の見直し、保育インフラの充実、シッター利用に対する社会的受容の醸成といった構造的課題にも目を向ける必要があります。