“Tourism”も、“Sightseeing”もどちらも日本語訳は「観光」だが、“Sightseeing”だけの表記だと、ただ景色を眺めるだけのぶらぶら観光見物というイメージになるが、“Tourism”となれば、観光地を何カ所も回る小さな旅のような意味が出てくる。

 アーティストの全国をめぐる公演を、「ジャパンツアー」と称していることもうなずける。観光庁は訪日外国人による日本の観光、地域振興という目標をかかげた役所なので、“Sightseeing”より“Tourism”の方が、その担う役割が明快になるというものだ。

英語に訳そうとすると
日本語の曖昧さが浮かび上がる

「英語にすると中身が見えてくる」という性質を利用して、私はときに学生が出してくる卒業論文の研究テーマのタイトルを、彼らに再吟味させることがある。「この卒論の表題を、もし英語で言うとどういう表現になる?」と尋ねるのである。卒論の研究には科学的見地から因果関係を明らかにするという側面がある。そこでは「何が」「何に」「どのような」という明快なテーマが示せないと、タイトルとしては不十分なのだ。

 かつて日本語で意味が分かりにくい(つまり内容がはっきりしない)ために、英語に訳しづらかった政府の政策として、「ニッポン一億総活躍プラン」(2016年)というものがあった。一億総活躍を機械的に英語にすると、まず「一億」の部分は“100 million citizens”か“All Japanese”にとりあえず訳し、続いて「総活躍」を付けて“All Japanese be active”とすることになるが、これでは外国人にはよく分からないであろう。