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最前線で働くビジネスパーソンが押さえておきたい、時代の変化とその背景を理解する上で欠かせない注目書籍を作家で元外交官の佐藤優さんが厳選する。文系学生やビジネスパーソンが「数学」を学ぶことの意味とは?会社で出世するためにも役立つ「神学的思考」の真髄とは?答えよりも問いが重要になる生成AI時代において、「より深い問い」を立てるために欠かせないものとは?『人に話したくなる数字と科学の話』『地頭スイッチ』『AI時代に自分の頭でどう考える?』の3冊から「ここだけは読んでほしい重要な箇所」を紹介する。(作家・元外務省主任分析官 佐藤 優)
苦手意識を持つ学生たちも夢中になる
「数学」を学ぶ意味とは?
佐藤健太郎著『人に話したくなる数字と科学の話』は、サイエンスライターである著者が身近な話題から宇宙、生命、社会までを「数字」を手がかりに読み解いた優れた作品だ。
佐藤健太郎著『人に話したくなる数学と科学の話』文春新書、2026年8月刊行
評者が教えている文科系の大学生には数学嫌いが少なからずいる。しかし話を聞いてみると、計算に苦手意識を持っている場合が多い。日本の中学・高校の数学教育では、どうしても計算問題を正確に解くことに力点が置かれる。その結果、「数学とは手計算がたいへんな科目だ」という印象を抱いたまま大学に進学する学生もいる。しかし、大学に入ると計算機を使うようになるので、手計算が苦手でも大きな支障がなくなる。大学に入って数学的思考の面白さに気付くと、がぜん、熱心に取り組むようになる。本書には、そのきっかけになりそうなエピソードが数多く盛り込まれている。
評者が大学の講義でよく用いるのが、「ガチャ」の例である。
〈多くの場合、1回数百円でくじ引きをし、レアなアイテムやキャラクターを手に入れる仕組みなのだが、これにハマってしまう人が少なくない。たとえば、ランダムのくじ引きで10種のキャラクターを全て揃える(コンプ)には、何度くじを引けばよいだろうか。なんとなく、20回も引けば全部揃いそうな気がしてしまうが、実は20回目までにコンプできる確率は約21パーセントに過ぎない。30回で63パーセント、40回でも86パーセントだから、ちょっと運が悪ければあっという間に大枚が吹っ飛んでしまう〉(223ページ)
この話をすると、学生たちは目を輝かせる。「20回も引けば10種類くらい揃うだろう」という直感と、実際の約21%という確率との間に大きな隔たりがあるからだ。そこで、なぜ21%にしかならないのかを考え始める。こうなれば確率は試験のために暗記する公式ではなく、現実世界を理解するための道具になる。数学を学ぶことの意味は、「なぜそうなるのか」「直感と現実はなぜ食い違うのか」と考えるきっかけを得ることだ。数字を通して、それまでとは違った角度から世界を見る訓練をすることと評者は考えている。







