今回の会談が「関係を壊さない会談」だったと考えると、これは中間選挙を控えたトランプ氏にとって合理的な選択だとわかる。

 中国との関税戦争が再燃すれば、輸入物価、農産物輸出、株式市場、製造業に影響が及ぶ可能性がある。現在のトランプ氏には、中国との新たな対立を生じさせる政治的メリットはほとんどない。

 中国側にも同じ事情がある。経済停滞が続くなか、対米関係をさらに悪化させ、輸出や投資への圧力を強められることは避けたい。

 したがって、両国ともに、「問題を解決すること」ではなく、「問題をこれ以上悪化させないこと」が重要な目的になっていると考えられる。

トランプが習近平を厚遇した理由

 トランプ氏は習近平氏を、なぜあれほど厚くもてなしたのだろうか。

 今回の訪米は正式な国賓訪問だった。ホワイトハウス自身も「reciprocal State Visit」、つまり5月のトランプ氏の国賓訪中への返礼訪問と位置づけており、国賓待遇そのものは外交儀礼にかなったものだ。

 ただし、出迎えの様子をみると、トランプ氏も厚遇の演出を見せており、単なる返礼以上の意味も透けて見える。というのは、アメリカでは中国に対する世論は依然として厳しいからである。

 米調査機関ピュー・リサーチ・センターの2026年3月調査では、中国に好意的な見方を持つ米国人は27%にすぎず、71%が否定的に見ていた。前年より若干改善したとはいえ、圧倒的多数が中国を好意的には見ていない。

 これはアメリカ議会も同様だ。共和党はもちろん、民主党も中国への警戒感は強く、台湾、先端技術、重要鉱物、人権、安全保障などでは厳しい政策を支持している。

 たとえば、共和党のトム・ティリス上院議員は今回の首脳会談を受けて、「圧制者と過ごす時間が増え、民主主義国のリーダーと過ごす時間が減っている傾向を心配している」とトランプ氏を批判している。

 このことは当然、中国側も把握しており、習氏から見れば、訪米は厳しい逆風の中に乗り込むものだった。

 その中で、トランプ氏だけが、「あなたを国賓として迎える」「あなたとは友人だ」「直接話せば問題は解決できる」と最大限のリップサービスを尽くしている。

 つまり、今回の国賓待遇の本当の意味は、「厳しい世論にもかかわらず、大統領が厚遇する」というスキームそのものに意味がある。