政策は変えない、でも習近平は厚遇する…トランプ流交渉術の狙い
今回、トランプ氏は安全保障や先端技術をめぐる基本政策について、大きな政策的譲歩をしていない。「台湾独立に反対する」とも約束しておらず、台湾への武器供与の停止もしていない(延期はありうる)。対中半導体規制を全面解除したわけでもない。
しかも、首脳会談直前に、日米首脳が対中政策についてしっかりと打ち合わせをやっている。また、マルコ・ルビオ国務長官は日本や韓国との外相会談で、「同盟国防衛へのコミットメントは揺るぎない」と明言し、台湾海峡の平和と安定の重要性も強調している。
つまり、「中国に対する安全保障政策に変化はない」という構えを作った上で、米中首脳会談にのぞんでいるのである。「政策は変えないが、外交儀礼は尽くす」というやり方で、トランプ氏は習氏との関係を今後の交渉に生かそうとしていたと考えるのが自然だ。
実は習氏にとって「外交儀礼を尽くされること」は、大きな意味を持っている。
中国経済は不動産不況、消費低迷、地方財政問題などを抱えており、低成長を受け入れなければならない瀬戸際まで来ている。軍上層部では相次ぐ粛清が続き、権力集中の裏側で党内統制をめぐる不透明さを増している。
なお、習一強体制をめぐる異変については、ダイヤモンド・オンライン『「習近平重病説」はなぜ突然広がった?「習一強」を揺るがす3つの異変』に、詳しく解説している。
習氏はこれまで「中国が上昇し、西側、とりわけアメリカが衰退している」という「東昇西降」と呼ばれる世界観を繰り返し語り、アメリカ衰退論を強調してきた。その延長で、トランプ氏が前回の首脳会談で何度も習氏を持ち上げたことを「アメリカが歩み寄ってきた」と主張している。
習氏が、もしアメリカから冷遇されれば、これまで語ってきたアメリカ衰退論が疑問視される可能性もある。つまり、習氏が自らを正当化する物語を、今回の厚遇が守ってくれるのである。







