ストレスに打ち克つひとつの方法
鬱状態とは、自分で自分を追い込んでいく状態だ。その出方に個人差はあるが、自分で自分を不安にさせて身体が勝手に反応し、それがまた不安を増幅させてしまうという負のループになることが人間にはあるのだ。
そこからどうやって立ち直っていったのか。一つは、自分の考え方が自分を追い込んでいることに気がつくことだった。考え方を変えれば、病気を克服できるのではないか――本村はそう考えたのだ。強迫性障害や鬱がすべて「考え方を変えれば克服できる」という意味ではない。あくまで、自分自身の経験から得た実感である。
まず、自分と他人のモチベーションが違うことに対してイライラしないよう、割り切ることにした。トレーダーには一人ひとり、許容できるリスク量が決まっている。1億円までリスクを取っていいと言われても、1000万円くらいしか取らない人が多い。大きく儲けるよりも大損をしない方がいいという行動を取る人が意外と多いのだ。大きく損してクビになるくらいなら、そこそこの成績で給料をもらっている方がいいというサラリーマン的な感覚だ。
本村は1億円の許容リスクを与えられたら、恐れずそのまま1億円のリスクを取る。むしろ5億円、10億円のリスクを取らせてくれと交渉するタイプだったので、そうした考え方がどうしても理解できなかった。チームの結果が出ていないのにイライラしても、誰もリスクを取ってチャレンジしてくれない。
しかし「チャンスがあったらやる」のが当たり前だと思っていたのは自分だけで、人によっては違うのだとわかってきた。「ポジティブなことを目指すよりもネガティブなことを削ろうとする人が多い」――自分とは違う視点を、本村は少しずつ学んでいった。
「なんでこいつらはこんなにリスクを取らないんだ」とイライラするのではなく、「この人たちができるのはこれくらいだから、期待値もそこまでにして、不足分は自分がカバーしよう」という発想に切り替えていった。リスクを取らない人を変えようとするのには時間がかかる。人それぞれに適切なリスク量があるのだと、本村はようやく理解した。







