がんばることとは別に
遊びの世界を持つ大切さ
柳瀬 意外というか、子どもの頃から昆虫好きだった養老さんが、マンガにもゲームにもそんなにはまっていたとは……。世の中の虫好き、マンガ好き、ゲーム好きの人たちは、うれしい限りです。
養老 いやあ、大学に勤めている間は、わりあいそういうことをして遊ぶヒマあったんです。それにぼくはもともと、努力して働くことに抵抗感を覚えるタチでね。
柳瀬 読者の皆さん、今の大学教員は忙しいです!
養老 日本は明治維新以降、外から入ってきた知識や技術を一生懸命学んで、応用・実践することを奨励したでしょ?それが上手にできる人を褒める。そんな風潮もありました。つまり、お勉強する人が偉い。ある意味で、明治政府の中心にいた薩摩と長州の人たちがつくった価値観ともいえます。
柳瀬 明治維新のときは、海外の技術、海外の知識、海外のサービスをとにかく翻訳して輸入する。まさに知的エリートがみんな「輸入産業」に従事して、とにかく徹夜して翻訳して社会実装して、という時代でした。まあ、そのときにがんばってもらったので、今の日本があるわけですが。
養老 その徹夜して働いて勉強して、そういうがんばり方が偉い、という考え、今もけっこう残っていますよね。2025年秋、高市早苗さんが総理になったときに「働いて、働いて、働いて……」って宣言してらっしゃいました。「がんばればいいことがあるって、いまだに政治と経済の中心の発想なのかな」と思いました。
柳瀬 がんばるとダメですか。
養老 がんばるのがダメということでもない。でも、現実問題、がんばっても報われないことって、たくさんあります。がんばることを信じすぎちゃうと歳をとってから「がんばったけど、何も返ってこないじゃないか」と機嫌の悪い老人になっちゃったりする。
その意味でも、マンガを読んだり、ゲームをしたりして遊ぶ時間って大切ですよ。もちろん虫採りも。自分ががんばらないといけないところと別の世界、これを持っていたほうがいいです。そのほうが歳をとってからも幸せでいられます。







