次世代ハードの発表を2024年度中に行う予定の任天堂。現行機のNintendo Switchはこれまでの任天堂の歴代ハードの中でもさまざまな意味で「最強」だった。それが代替わりすることで、任天堂のビジネスモデルはどう変わるのか?マリオやゼルダなど豊富なIP(知的財産)を活用することで生まれる金鉱もまだ眠っている。特集『50兆円をゲットだぜ!日本のゲーム』(全25回)の#17では、任天堂「最強」伝説はいつまで続くのか、そしてそこに死角はあるのかを検証しよう。(ダイヤモンド編集部 鈴木洋子)
「ゲーム業界」ではなく「任天堂業界」に
属する特殊な伝統技能企業
「任天堂は日本のゲーム業界を代表する企業というよりも、『任天堂業界』に属する特殊な企業である」「代々秘伝の稼業を引き継ぎ続ける西陣織工房」――ゲーム業界人が任天堂を表現する形容詞はさまざまだ。
世界に家庭用ゲーム機という市場を1983年のファミリーコンピュータで生み出し、マリオやゼルダ、ポケモン、星のカービィなどのさまざまな国際的なドル箱キャラクターを世に送ってきた任天堂。本特集#10『ソニーの「ゲーム会社への転身」は成功だったといえるのか?長期の財務分析で死角も含めて徹底検証!』で見てきた同じプラットフォーマーであるソニーの生き方とは対照的な生き方をしてきた。
サードパーティ(他社開発)タイトルに頼るソニーに対して、現在発売されているタイトルのおよそ7割程度を自社で開発する任天堂。ソフトメーカーとしてPCなど自社ハード以外のプラットフォームにタイトル販売を行い、ライブサービスゲームなど新たなビジネスにも参入するソニー。一方、そうしたはやりものには見向きもせず、ひたすら「ハード・ソフト一体型ビジネス」を貫き続ける任天堂。
そんないわば「伝統芸能」を貫く任天堂は、今期一つのターニングポイントを迎える。現在のハードであるNintendo Switchに代わる新ハードが発表されるのだ。
最強の名をほしいままにする任天堂だが、実のところ「Switch以降最強になった」と表現するのが正確だ。それまでは、ハード・ソフト一体型戦略が時代によっては大失敗に終わり、経営の根幹を揺るがす事態となったこともあった。
任天堂最強伝説は今後も続くのだろうか。ゲームのハードとソフトを一体で提供するという主力事業一本で勝負する任天堂に、今後も死角はないのか?90年代からの長期財務諸表をひもときながら、じっくり検証してみよう。