スティーブン・ジョンソン Gemini Notebook共同開発者Photo by Koji Yuasa

米グーグルのAIリサーチツール「Gemini Notebook(旧NotebookLM)」のユーザー数が世界で3000万人を超え、同社のAIサービスの有力な柱に育ちつつある。実は製品開発を主導したのは、米国のベストセラー作家だ。『世界をつくった6つの革命の物語』などの著者で、2022年にグーグルに入社したGemini Notebook共同開発者のスティーブン・ジョンソン氏がダイヤモンド編集部の単独取材に応じた。インタビューの前編では、開発秘話を明かしてもらった。(聞き手/ダイヤモンド編集部副編集長 大矢博之)

「いつか究極のリサーチアシスタントを」
大学2年生のころからアイデアは温めていた

――NotebookLMは便利な製品で、私も使っています。

 今(7月から)は「Gemini Notebook」ですね。私も同じ間違いをしてしまいます(笑)。実は社内ではずっと「Notebook」と呼んでいて、私はその名前にしたかったのです。ただ、最初に名前を付けた時は時期尚早で、「Google Notebook」と呼ぶには早過ぎました。そこで保険をかけるため「LM」を付けたのです。今はGemini Notebookになりましたが、われわれはNotebookと呼んでいます。

――Gemini Notebookはどのようなアイデアから生まれたのでしょうか。

 実は、大学2年生だった1987年ごろからアイデアは考えていました。本当に長い時間をかけて温めてきた構想なのです。私は昔から、「ソフトウエアがいかに自分の学びや理解を助けてくれるか」に強い関心を持っていました。

 大学時代、「HyperCard(ハイパーカード)」というソフトウエアを米アップルが出しました。インターネットが普及する前のことで、ある種のナレッジマネジメント(知識管理)ツールのようなものでした。私は夢中になり、勉強や授業の資料の整理に使おうとしました。その時、「いつか究極のリサーチアシスタントのようなソフトウエアが持てるようになるはずだ」という“種”が頭に植え付けられたのです。

 その後、私はキャリアの大半を書籍の執筆に費やしました。新刊を書くたびに新しいことを膨大に学び、知識や取材した数々のインタビューを管理しなければなりません。そのため、メモ書きツールや「Google Scholar」といった最新のアプリを常に試していました。

 そして今から4年ほど前、グーグルから連絡があり、「君が『思考ツール』に強い関心を持っているのは知っている。われわれには新しい言語モデルがあり、君がずっと作りたかったものをついに作れると思う。グーグルに来て小さなチームを率い、何かを作ってみないか?」と誘われたのです。素晴らしい旅になりそうだったので、引き受けることにしました。

 正直なところ、楽しいプロトタイプを幾つか作って終わるだけで、製品として出荷され世界に出ることはないだろうと思っていました。「世の中には出ないだろうけれど、楽しい冒険になるし、面白い人たちにも出会えるだろう」と。ですから、Notebookが世界中で数千万人ものユーザーに使われる素晴らしいプロダクトに成長したことは、本当に信じられません。