「ポストAI」へ投資バトル 熱狂!量子覇権Photo:traffic_analyzer, Just_Super/gettyimages

量子コンピューターへの投資が世界で加速している。高市政権の戦略17分野に選ばれ官民10.3兆円の投資が掲げられたほか、米国も20億ドルの投資を発表。中国も日米以上の巨費を投じる。特集『「ポストAI」へ投資バトル 熱狂!量子覇権』の本稿では、実用化に向けて研究開発が加速する量子コンピューター業界と主要プレイヤーの最新動向を追った。(ダイヤモンド編集部副編集長 大矢博之)

加速する量子コンピューターの投資競争
たった3年で「今動かないことがリスク」に

 日本の“次の飯のタネ”となる先端技術領域を特定して投資する流れの中で、量子は「もう絶対やるぞ」と特定されていて、大規模な予算や施策を講じ、産業政策化していくフェーズにある――。

 7月8日、経済産業省本館17階。研究開発投資やイノベーション政策を議論する会議で、経産省イノベーション政策課の武田伸二郎課長(当時、現参事官)は、量子コンピューター政策の位置付けについてこう力説した。

 高市政権の戦略17分野に選ばれた「量子」には、2040年度までに官民で10.3兆円を投資する計画が掲げられている。この日の会議に経産省が提出した資料は、量子に巨費を投じる意義を強調するためのものだ。とりわけ、日本が世界の投資競争に乗り遅れてはいけないという危機感がにじんでいた。

 中国の25年までの政府累計投資額は約2.3兆円規模で、日本の約5倍、米国の約2倍。さらに、25年に1兆元(約20兆円)の政府ファンドを立ち上げ、量子を含む新興技術に支援――。

 資料では日米以上に中国が量子コンピューターに資金を投じている実態を指摘。さらに、英国は10年で25億ポンド(約5000億円)の公的投資を、フランスは5年で18億ユーロ(約3240億円)規模の公共投資を、韓国は35年までに官民で総額3兆ウォン(約3000億円)超の投資などといった、世界各国が量子に本格的に投資を始めた政策動向をまとめている。

 米政府も5月に量子コンピューティング関連の米企業9社に20億ドルを投資すると発表したように、量子産業への投資が膨らんでいるのにはもちろん理由がある。一つは、当初の想定よりも量子コンピューターの性能向上や実用化に向けた取り組みが進んでいるからだ。

「たった3年で、『今動かないこと自体がリスク』という評価に変わった」

 こう語る産業技術総合研究所量子・AI融合技術ビジネス開発グローバル研究センター(G-QuAT)の堀部雅弘副センター長が注目するのは、世界的なコンサル大手、米マッキンゼー・アンド・カンパニーが定期的にまとめている量子技術レポートの記述の変遷だ。