日立ができていて
米中ビッグテックができていない部分

 OpenAIやAnthropic、あるいはDeepSeekやアリババは、クラウド上のサイバー空間で動くソフトウェアやアルゴリズム、計算資源の最適化には圧倒的な強みを持っています。

 しかし彼らは、自前で鉄道車両を製造していません。送電網の変電設備も作っていませんし、工場の重機やビルの昇降機も持っていません。彼らが現実世界を動かそうとするとき、どうしても「リアルの現場」との間に大きな壁が存在します。

 対する日立は、鉄道、エネルギー、産業機器といった重厚長大な「フィジカルなハードウェア(OT:制御技術)」を創業以来100年以上にわたって作り続けてきました。

 さらに、グループに日立ソリューションズやGlobalLogicなどの強力なIT・ソフトウェア基盤を持っています。この両方を持っているからこそ、具現化できるソリューションがあります。

 例えば、日立レールが展開する鉄道ソリューション「HMAX」が海外で大活躍しているのをご存知でしょうか。米NVIDIAなどの技術も活用し、列車や線路設備から得られる膨大なセンサーデータをAIで解析し、予兆保守や運行最適化を行っています。すでにデンマークのコペンハーゲン地下鉄などで導入が進んでいます。

 これは単に画面上でAIを動かす話ではありません。自社の鉄道車両、線路設備、センサー、エッジコンピューティング、運行システムを熟知しているからこそ、AIの出力をダイレクトに鉄道の安全運行につなげられるのです。

 さらに日立は、従来のAI半導体と比較して消費電力を約10分の1に抑える、省電力の「エッジAI半導体」を開発しています。電力制約が厳しい列車内やプラント現場でAIを動かすには、こうしたハードウェアレベルのブレークスルーが不可欠です。

 日立ができていて、米国や中国のビッグテック企業ができていない部分は、まだあります。最大の参入障壁となるのが、「現場の暗黙知」です。

 日立の運転支援システム「DAS(Driver Advisory System)」は、熟練運転士のノウハウを形式知化し、定時性と省エネを両立する最適なノッチ操作や惰性走行のタイミングを提示します。これによりたとえば東京モノレールで16.4%、京王電鉄で最大12%もの省エネ効果を実証しています。