桑名市では、カスハラに該当するかどうかの認定に関して、調査審議のための専門機関を設置することになっております。さらに、就業者や事業者等は市長に対して、顧客の言動がカスハラに該当するか否かについて、判断を求めることができ、市長は判断に当たって専門機関であるカスタマーハラスメント対策委員会に諮問することになっています。その後、カスハラに該当すると判断された事案を公表し、状況が改善しない場合は、罰則として氏名を公表します。
公共サービスでカスハラ客を
「出禁」にしてよいのか
2025年12月の段階では、市には17件の相談が寄せられ、そのうち、2件をカスハラとして市が認定しました。この2件については、警告書の発布段階で留まっており、氏名の公表には至っておりません。カスハラを行ったからといって直ちに氏名が公表されるわけではなく、カスハラと判断され警告を受けても、繰り返しカスハラを繰り返すような場合に限って、罰則が与えられることになります。こうした罰則規定があることで、注意を受けた人がカスハラを繰り返さないための抑止力となっているといえるでしょう。
『クレームvs公務員――「住民の声」というジレンマ』(山谷清秀、筑摩書房)
それでは、行政職員が被害を受けた場合に行為者の氏名を公表することは認められるでしょうか。行政職員の皆さんに聞くと「難しそう」という声が聞かれます。ただし、庁舎管理規定などにもとづいて住所氏名を公表しているところはあります。
筆者が実際に目撃した例でいえば、ある公立病院ではA4の紙で、住所と氏名にくわえて「右の者の一切の立ち入りを禁ずる」と印刷されたものを、複数の入口にそれぞれ複数枚貼っていました。大変目立ちますので初見の際はギョッとしましたし、いったいどのようなことをしたらこのような制裁に至るのか、関心を持ちました。その病院は、自治体のなかでは中心的な病院で、そこでしかできない治療もあるため、住所・氏名の公表にくわえて、いわゆる「出禁」というのは果たして行政として適切かどうか問われるでしょう。
住所・氏名の公表は、本当に効果があるかは不明瞭ですが、抑止力として一定の期待が寄せられています。また、行政の現場においても「出禁」があり得ることは注目すべきです。ただ、実際に生活していくなかで行政サービスや手続きを避けてとおることはできない点には考慮が必要です。この点については今後も議論の余地があるでしょう。







