再発するか否かは
専門医も予測できない

 私の妻も乳がんの手術を受けたあと、再発を予防するために抗がん剤と放射線の治療を10カ月にわたって受けた。激しい腹痛や吐き気、脱毛、全身倦怠などに悩まされ、とても耐えきれないのではと思ったこともあった。

 予防的な治療なので、細胞レベルで散らばっている場合に備えて行うが、もし散らばっていなければ無用の治療で、単に苦しみ損ということになる。

 また、この治療をしても、再発するときは再発するので、その場合もやはり無駄な苦しみということになる。

 唯一、苦しんだ値打ちがあるのは、この治療をしていなければ再発したが、この治療をしたおかげで再発を抑えることができたという場合のみだ(現実には判定不能)。

 今のところ再発はしていないが、それが術後の抗がん剤と放射線の治療をしたからなのか、元々細胞レベルで散らばっていなかったからなのかはわからない。乳がんの場合は術後10年、経過を見る必要があるので、まだまだどうなるかわからない。

 このように、がんの治療はわからないことだらけの中で、医者が方針を決めているのが実情だ。

 再発の治療でも、すぐに効果が現れなくても、しばらくして効きだすこともあるので、副作用に耐えて治療を続けることが重要なこともある。1度目はさほど効かなくても2度目に効くこともあるし、1度目に効いても2度目はダメということもある。

 厳然として存在するのは、副作用による患者の激烈な苦しみだけだ。

 その状態で、無闇に励ますことの是非は、どう判定すればいいのか。励まして苦痛に耐えたおかげで命拾いする可能性ももちろんある。

 しかし、無駄な苦しみを押しつけ、貴重な時間を無駄にし、場合によっては寿命を縮める危険性もある。

 専門医はデータは知っているが、データは個人には必ずしも当てはまらず、目の前の患者がどうなるか、確実には予言できない。

 繰り返すが、私は家族が患者を励ますことが、悪いと言っているのではない。