ホテル 地殻変動#1Photo by Masato Kato

訪日外国人観光客数の伸びが鈍化し、「インバウンドバブルは終わった」との声も一部で聞こえ始めた。政府が目標として掲げる「訪日外国人旅行者数6000万人」は夢で終わるのか。星野リゾートの星野佳路代表は「方針転換が必要ではないか」と警鐘を鳴らす。特集『ホテル 地殻変動』の#1では、星野代表が観光立国としての課題となすべきことを赤裸々に語った。(聞き手/ダイヤモンド編集部 下本菜実)

インバウンドついに減少へ
バブルは終わった?

――日本政府観光局(JNTO)の発表によると、4月の訪日外国人観光客数は前年同月比で6.7%減となり、6月まで3カ月連続で前年を下回りました。「インバウンドバブルは終了したのではないか」という指摘も出ています。

 新型コロナウイルス禍の収束後、訪日外国人観光客数は前年比で劇的に伸び、インバウンド市場は急速に拡大してきました。ただ、爆発的な成長期を経て、足元ではその勢いがはっきりと鈍化してきています。

 今年は4月以降、訪日外国人観光客数の前年割れが続いており、8月の速報値では観光のほか、ビジネスや留学などの目的を含む訪日外国人客数(以下、訪日外客数)は前年同月比で9.6%減まで落ち込みました。もちろん、秋以降の動向次第ではありますが、私は年間を通したインバウンドの数値は「減少に転じる」と予想しています。

 少なくとも横ばいにとどまり、2025年の訪日外客数である4268万人から、100万~200万人規模の減少となっても不思議ではない。

――26年1~8月の推計値では、中国からの訪日外客数は56.7%減と大きく落ち込んでいます。インバウンド市場で大きなシェアを占めてきた中国の動きをどう読みますか。

 中国からのインバウンド需要に関しては、ここからさらに大きく底割れすることはないとみています。確かに団体ツアー客は劇的に減少しましたが、個人旅行客は継続して来訪しています。

 現場の感触として、中国からの団体客が減ったことで観光業界が深刻な打撃を受けているかといえば、実はそこまでではありません。中国市場の減少分を、韓国や台湾、メキシコといった国々からの伸びがカバーし、全体としては前年並みの水準を維持できているからです。

 では、今最も打撃を受けて困っているのは誰か。それは、中国の旅行会社と取引してきたランドオペレーター(手配会社)や航空会社です。訪日外客数が半減したということは、中国便のアセット(座席)の稼働率が半減していることを意味します。航空会社側からすれば、この状況は深刻。意外にも、今後「日本への観光需要を呼び戻そう」と積極的に動くのは、日本側ではなく中国側のビジネス事業者になるのではないかと予想しています。

――仮にインバウンドの成長が横ばいに転じるとなれば、その最大の要因はどこにあるのでしょうか。

大手外資系ホテルチェーンは、地方進出を加速させている。一方で、地方での交通手段となるバスなどのインフラ整備や、観光客を呼び込むための宣伝は十分とはいえない状況だ。インバウンド6000万人という目標を達成するためには、何が必要なのか。次のページでは、星野代表が観光立国であるフランス、スペインとの「圧倒的な違い」のほか、国内旅行市場の課題を赤裸々に語った。