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10月7日、公正取引委員会はアサヒ、キリン、サントリー、サッポロの大手4社に対し、独占禁止法違反の疑いで強制調査に踏み切った。なぜ、業界にはリスクを冒してまで「横並び」の慣行が横たわっていたのか。取材を進めると、メーカー側の防衛本能だけでなく、商品を仕入れる卸業者や小売りサイドまでもが「価格横並び」の構造に依存していた実態が浮かび上がってきた。(ダイヤモンド編集部 下本菜実、山本興陽)
値下げで売り場が活気づく中
大手ビール4社にカルテルの疑い
国内ビール類市場を揺るがす、前代未聞の事態が発生した。10月7日、公正取引委員会は独占禁止法違反の疑いでアサヒビール、キリンビール、サントリー、サッポロビールに対する強制調査に踏み切った。
4社は国内ビール類市場で、9割以上のシェアを握っており、食品業界で最大規模のカルテル疑惑へと発展している。
公取委が重大な関心を寄せているのが、ビールメーカー各社が加盟する業界団体「ビール酒造組合」の存在だ。関係者によると、毎月第1木曜日に開催される通称「一木会(いちもくかい)」という会合などで、担当者らがビール商品の価格維持や値上げの幅・時期について調整を行っていた疑いが持たれている。
今回の公取委の動きは、任意調査とは一線を画す「強制調査」だ。裁判所の押収捜索許可状に基づき、証拠資料を強制的に差し押さえる強い権限を伴う。この先、検察庁への刑事告発が視野に入っているほか、行政処分として課される課徴金の算定率は、売上高に対して原則10%に達する。大手4社が販売するビール類の市場規模は約1.5兆円。違法行為が認定されれば、4社の課徴金の合計は約1500億円に上る可能性がある。
もっとも、足元では10月に酒税法改正が実施されたばかりだ。スタンダードビールでは、350ml缶当たりの酒税が従来の約63円から約54円へと約9円引き下げられた。「アサヒ スーパードライ」「キリン 一番搾り」「サッポロ 生ビール 黒ラベル」「サントリー生ビール」など、各社の主力であるスタンダードビールは店頭で一斉に値下げとなった。
売り場が大きく活気づいていたタイミングだけに、今回のカルテル疑惑に対し、SNSでは消費者から「不当につり上げられていたってこと?」といった不信感を示す声が相次いでいる。
では、なぜ業界を代表する4社は、独禁法違反の疑いがある慣行をやめることなく、続けていたのか。
長年にわたり、業界に「他社と足並みをそろえる」という慣行や意識があったことは否定しづらい。しかし、興味深いのは、この構造によるメリットを、ビールメーカー4社だけが得ていたわけではないことだ。実は商品を仕入れる卸業者や小売企業も、一定のメリットを得ていたという。
業界全体の流通の仕組みと、関係者が明かす「本音」、そして今後の市場展開について、次ページで詳しく解説する。







