こうした環境の中で、「ノーベル賞の受賞が爆発的に増える」といった強気な発言は近年ほとんど聞かれなくなった。
今回の硤合名誉教授らの受賞の理由は、「不斉有機合成における非線形効果および自己触媒反応の発見」として評価されたということだ。「硤合反応(不斉自己触媒反応)」を発見したのは1995年で、教授は東京理科大学で40年以上にわたり研究し続けたことが中国で報じられた。
長年コツコツ、地道に研究を続けてきた科学者の姿が、中国SNSの一部の利用者の心を打った。
そのため、中国のSNSには「日本には“非昇即走”がないのか?」という書き込みが散見された。
「非昇即走」とは、今まで中国の大学がアメリカから導入した、テニュアトラック制度(任期付き採用から終身在職資格の取得を目指す人事制度)のこと。
新規に採用された若手教員が、契約で定められた任期内に、評価基準を達成して職名を昇格させることができなかった場合、大学からの契約更新は行われず、退職するか、教育・研究以外の職種に異動しなければならない。
そのため、研究者としてさまざまな短期的な業績評価への対応に追われ、長期的研究に腰を据えて取り組む時間が確保できない状況となっている。現在、中国では、このような「短平快」(短く、手軽で、すぐに成果が出る)」と人事評価システムを批判し、見直している大学が増えている。
というわけで、今回の日本人研究者のノーベル賞受賞に対しての中国人のいろいろな反応は、中国国内のさまざまな事情を照らしたものである。
独創的な研究や根本的なイノベーションを生み出す能力において、現段階では中国と日本の間に差があることを、冷静に受け止めるようになったと言えるのだ。
今、日中関係はもっとも緊張し、冷え込んでいると言われている。
しかし、日本のノーベル賞の受賞に、中国の人々が素直に祝福し、称賛している。あるネットユーザーが、次のようにコメントを書いた。
「科学に国境はなく、真理に東洋も西洋もない。真の進歩とは、決して自分たちの殻に閉じこもり、自らの優秀さを誇示することではない。国同士の対立や偏見を超え、他国の優れた成果を素直に認め、学ぶべきだ」
この言葉は、今回の中国人の反応を象徴しているように思える。政治的な対立が深まる時代だからこそ、優れた成果を素直に称え、互いに学び合う姿勢には大きな意味がある。







