働いて稼ぐより、資産を持つ人が豊かになる時代

 このことを理解する際に参考になるのが、フランスの経済学者トマ・ピケティの世界的ベストセラー『21世紀の資本』だ。

 ピケティは、資本収益率を「r」、経済成長率を「g」とした場合、長期的には「r>g」という関係が成立しやすいと論じた。簡単にいえば、株式や不動産などの資産が生み出す利益が、経済全体の成長を上回りやすい。

 たとえば、1億円の資産を持つ人が年間5%の収益を得れば、それだけで500万円の利益が生まれる。一方、年収600万円の会社員の給与が5%上昇しても、増えるのは年間30万円にすぎない。

 もちろん、資産運用には損失の可能性があり、ピケティも「r>g」が必ず格差の拡大を引き起こすとは主張していない。それでも、富裕層が保有する資産の割合が変わらなくても、資産価格が賃金を上回る速度で上昇すれば、労働所得だけで資産階層を上ることは難しくなる。

普通の会社員が1億円超え!「いつの間にか富裕層」の正体

 野村総合研究所は2025年2月に発表した調査で、純金融資産1億円以上を保有する富裕層・超富裕層が、2023年に165万3000世帯に達したと推定している。

 これは、2021年の148万5000世帯から、わずか2年間で約17万世帯が増えたことを意味する。また、富裕層以上の世帯が保有する純金融資産総額も、364兆円から469兆円に増加している。

 その背景には、株式や投資信託などの価格上昇や、円安による外貨建て資産の評価額増加などがあるという。

 ここで注目されるのが、冒頭でも言及した「いつの間にか富裕層」と呼ばれる人々の存在だ。

「いつの間にか富裕層」は、必ずしも企業経営者や高額所得者ではない。普通の会社員として働きながら、従業員持ち株会などを通じて長年にわたり資産を保有してきた人々が中心だ。

 単に勤め先の「ルール」に則ってやっていたら、その後の株価上昇によって金融資産が増え、気がついたら1億円を超えていたというケースが散見されるという。野村総合研究所は、こうした人々が富裕層以上の世帯の1~2割程度を占めていると推察している。