興味深いのは、彼らが必ずしも投資の専門的知識を持っているわけではないことだ。長年にわたって資産を保有してきた結果、本人もそれほど意識しないうちに資産が増えていたという事例もある。

 また、金融資産が1億円を超えても、それまでの生活水準を大きく変えず、給与所得の範囲内で暮らしている人が多いという点も特筆に値する。

 ルーティーンをこなしているうちに資産が1億円を超えた。そして、資産が1億円を超えてもルーティーンを崩さず、生活スタイルも変えないことが、さらなる資産形成につながっていると考えられる。

「いつの間にか富裕層」を生んだ日本型雇用、これからはどうなる?

「いつの間にか富裕層」になった人々の中には、長期雇用のもとで持ち株会に何十年も積み立てたり、確定拠出年金や投資信託を長期間にわたって積み立てたりしてきた大企業の正社員も少なくないと考えられる。

 彼らが長期投資を続けられた背景には、毎月決まった給与が入ってくるという事情がある。生活費を給与で賄えるので、株価が下がっても慌てて売る必要がない。この「安定した給与」が、目先の値動きに動じない長期投資を支えてきたと考えられる。

 つまり、「いつの間にか富裕層」を生んだ背景には、投資の才能だけでなく、日本型雇用という制度もあったのではないだろうか。

 だが、日本型雇用は変容している。1984年に15%程度だった非正規雇用の割合は、2024年には36.8%に達し、雇用者の3人に1人以上が非正規となった。近年、この割合はやや低下しているものの、長期的には大幅に増えている。

 AI時代は、この先の雇用形態にも大きな影響を与えると見られる。転職も珍しくなくなった今の若い世代では、同じタイプの「いつの間にか富裕層」は生まれにくくなるのではないだろうか。