日経平均株価が最高値を更新したり、新NISAが話題になったりと、投資に興味を持つ人が増えています。老後に備えて資産を作ろうという人も増えていますが、家計相談で詳しく話を聞いてみると「お金があるのに、ない」という状況の人もいます。どういうことかというと……。(家計再生コンサルタント 横山光昭)
将来に向けて「老後の備え」を意識する人が増えている
新NISAや株価上昇などの話題が多いこともあり、"老後への備え"を意識する人が増えています。家計相談でも、若い人から定年間際の人まで、将来に向けてお金の貯め方、増やし方を知りたいと来られる方が増えています。
これはとても良い傾向ですが、中には無理をしてまでお金を将来に送ろうとする人もいます。例えば、必要な時に使える現金がないのに、すぐに引き出せない形で将来に向けた積立を懸命にやっていたり、毎月赤字なのに保険やiDeCoを積み立ててさらに赤字を増やしていたり、さまざまなケースがあります。
将来のお金を作るには、毎月安定した黒字家計を維持し、そこから生活防衛資金をつくり、そのうえで使わないお金を投資等に回していくのが好ましい方法です。しかし、過剰に将来を意識するあまり、その流れの一部がおかしくなり、生活やライフイベントに影響を出してしまっているケースが見受けられます。
将来に送っているものを一部あきらめれば修正できるのですが、それを手放すことも決心できず、お金はあるのにやりたいことができない……そういう状況の方が時折います。
3500万円も資産があるのに、私立中学に行かせるお金がない?
家計相談に来た会社員のFさん(55)は、老後にお金を先送りしすぎて今使えるお金がない人の一人です。「資産は3500万円ほどありますが、子どもを私立中学に行かせるお金がない」と相談に来られました。
パートの妻(52)と、11歳と9歳のお子さんの4人家族で、毎月の世帯手取り収入は約42万円。毎月の支出は45万円ほどと赤字で、ボーナスのない仕事のため、独身時代の貯金から赤字を補填しています。
40歳を超えてからの結婚と出産なので、子どもにお金をかけてあげたいと思う一方、夫婦の老後も心配しています。そのため、老後資金目的の貯蓄型保険に二人で8つほど加入し、毎月10万円の保険料を支払っています。さらに、それぞれiDeCoにも満額加入し、月に4万6000円拠出しています。つまり毎月15万円近くを、将来に送るお金として使っているのです。
42万円の収入から15万円を引いた残りの27万円が生活費になりますが、子ども二人の塾代に5万円、家賃が10万円となると、節約しても赤字になってしまうと嘆いています。食費、光熱費、通信費などは、かなり頑張って押さえているようです。