ゲームをしている女の子写真はイメージです Photo:PIXTA

ゲームをしているときだけ安心できる――。そう訴えた大学中退の20代男性に、精神科医が勧めたのは薬ではなく、1カ月間の「ゲーム断ち」だった。スマホやゲームなど、手軽な刺激に夢中になる若者を「ドパガキ」と呼ぶ言葉が話題だが、問題は若者だけではない。便利で豊かな社会なのに、なぜ人々は不安やうつに苦しみ、依存から抜け出せなくなるのか。精神科医が明かす、脳をむしばむ「快楽の落とし穴」とは。※本稿は、精神科医のアンナ・レンブケ著、脳科学者の恩蔵絢子訳『脱ドーパミン中毒』(新潮新書)の一部を抜粋・編集したものです。

豊かで便利な社会になったのに
人々の幸福度はなぜ下がるのか

 豊かさが実はストレス要因となり、世界中で依存症、うつ病、不安障害、自殺率を増加させている、という考えがある。人類はこれまでになく、生存の基本的ニーズ(衣食住)を満たせるようになった。人類史のどこをみても、これほど自由に使える収入や手が届く贅沢品、余暇時間が増えたことはなく、それは最も貧しい層の人たちにも当てはまるのである(2040年までに、米国の典型的な一日の余暇時間は7.2時間、労働時間はわずか3.8時間になると予測されている)。

 人間の生活のありとあらゆる側面が、もっとそれを欲しがるように、一つひとつがより手に入りやすく、より斬新で、より強力になるように設計されている……つまり、「依存」を引き起こしやすくなっている。

 調査報告によれば、今日の我々は30年前と比べて幸福度が下がり、うつや不安が増えている。若くして命を落とす人も増えている。現在、世界の死亡事例の70%は、喫煙・運動不足・不健康な食生活など修正可能な危険因子に関連している。