漁網から再生プラスチックを生産するエンバリオ社のプネー工場 Photo:A.Osanai(以下同)
なぜ今、日本企業にとって
インドが重要なのか
インドは中国に代わる「世界の工場」になれるのか。日本の製造業にとって、これは遠い国の成長物語ではない。トランプ政権下で不確実性の高まった日米関係、昨今の日中関係の摩擦の拡大などを踏まえて、日本がこれからどのような国と貿易をし、成長していくかの経営戦略に直結する問いである。
インドには、成長市場と供給拠点という二つの期待が重なっている。14億人を超える人口を抱え、国際通貨基金(IMF)が2026年7月に公表した見通しでは、実質経済成長率は2026年度に6.4%、翌年度も6.7%と予測されている。大きな経済がなお高い成長を続ける点に、企業が注目すべき理由がある。
所得の上昇が続けば、自動車や家電を初めて購入する需要だけでなく、より高性能で快適な製品への買い替え需要も広がる。消費者に完成品を売る企業だけの話ではない。増産に必要な設備、その製品に組み込む部品、部品の性能を支える材料にも商機が生まれる。市場の成長は、ものづくりの上流まで波及し得るのである。
もちろん、人口の多さだけで成長が約束されるわけではない。雇用や人材育成、電力・物流などの基盤が伴ってこそ、潜在的な需要は実際の購買力になる。だからこそ、インドを見る際には、経済成長率や人口だけでなく、その成長を支える産業がどこまで育っているのかを確かめる必要がある。
もう一つ、日本にとって重要なのが経済安全保障だ。2026年7月の日印首脳会談では、経済安全保障協力に関する共同宣言が発表された。ジェトロなどが2025年にまとめた日印両政府への提言でも、半導体や蓄電池などを含む分野で、供給網の強靱化に向けた協力の重要性が示されている。
特定の国からの供給に依存していれば、政治的な対立や災害によって、自社に問題がなくても生産が止まりかねない。ただし、これは中国との取引をすべてやめるという話ではなく、中国以外にも調達や生産の選択肢を持つ。その候補として、成長市場を内包するインドには大きな意味がある。平時には現地の需要に応えながら、供給網の分散も進められる可能性があるからだ。
もっとも、インドを日本企業のための「予備工場」として見るだけでは、持続的な関係は築きにくい。インド側にも、投資が雇用や技術の蓄積をもたらす利点が必要になる。日本が供給網を強くすることと、インドが自国の産業を育てること。その二つが両立する事業をつくれるかが、協力を実のあるものにする鍵だ。







