アメリカはなぜドイツに報復するのか?トランプ大統領の怒りを買った、ドイツ首相の「本音ポロリ発言」Photo:Win McNamee/gettyimages

【前後編の後編】ドイツのメルツ首相が10月28~29日に日本を初訪問。高市首相と経済安全保障や防衛産業の連携強化などを議題に首脳会談する。なぜドイツは日英伊3カ国による次期戦闘機の共同開発計画への参加を求めているのか。 そして、なぜ日本は慎重な姿勢を崩さないのか。ドイツと日本、米国の視点から深掘りして考察する。(ドイツ人ジャーナリスト 志村ユリア)

なぜ米国はドイツに報復するのか
ドイツが新たな協力相手を必要とする理由

 今年4月、ドイツのフリードリヒ・メルツ首相が「外交上の失言」(詳細は後述)をした後、ドナルド・トランプ米大統領は、ドイツから米兵5000人を撤退させると発表した。それだけではない。バイデン前政権が約束していた巡航ミサイル「トマホーク」の配備も取りやめた。

 その後、交渉を経てメルツ首相は7月、ドイツがトマホークを購入することで合意したと明らかにした。米国がドイツ駐留米軍に無償で配備するはずだったミサイルを、ドイツが自ら購入することになったのだ。

 かつては無償で提供されるはずだったものを、今やドイツは自国の費用で調達しなければならない。この変化は、現在の米独同盟が置かれている状況を如実に示している。

 実際、筆者の母国ドイツでは、専門家の多くが「米兵5000人の撤退は受け入れられる」と考えている。一方、欧州の安全保障にとって本当に深刻なのは、米国が同盟国として繰り返し信頼性を欠く姿勢を示していることだ。さらに、ドイツの防衛にとって極めて重要なトマホークについても、米国が供給を打ち切る可能性がある。

 これは時代の転換点であり、米独関係に新たな局面をもたらすものだ。

 第二次世界大戦後、米国は世界の軍事的抑止力に大きく貢献してきた。しかし、その役割が特に重要だったのは、ロシアが手ごわい潜在的な敵国だった冷戦期までのことだ。

 今日、戦略上の重点は変化している。米国にとって最大のライバルは、もはやロシアではなく中国だ。しかも中国は、米国が経済的に成長させてきた国でもある。一方、トランプ大統領は経済面でのパートナーとして、中国の歓心を買おうともしている。

 米国では11月3日に中間選挙が控え、トランプ氏にとって厳しい選挙になると指摘されている。しかし、たとえトランプ政権が弱体化しても、先述の変化(米国のロシア→中国シフト)は元に戻らない可能性がある。