スズキの鈴木修氏Photo:Hindustan Times/gettyimages

14億人の巨大市場に日本企業が抱く幻想

 中国経済の低迷が長期化するなか、「次の中国」としてインドへの期待が高まっている。

 中国の人件費上昇、米中対立、サプライチェーンの分断などを背景に、日本企業にとってもインドは有力な投資先となった。

 実際、日本貿易振興機構(JETRO)の2025年度調査によれば、インドに進出した日系企業の81.5%が、今後1~2年の事業拡大を予定している。

 だが、人口が多く、経済成長率が高いからといって、その国への投資が成功するとは限らない。

 そのヒントは、2022年12月に米外交専門誌『フォーリン・アフェアーズ』に掲載された「Why India Can't Replace China(なぜインドは中国に取って代われないのか)」という論文に詰まっている。

 執筆したのは、インド政府の元首席経済顧問アルヴィンド・スブラマニアン氏と、IMFの元インド駐在上級代表ジョシュ・フェルマン氏。両氏はインドの発展を妨げる構造的な問題を挙げたうえで、「中国が衰退すれば、おのずとインドが台頭するわけではない」と主張した。

 それから約4年。インドは製造業振興を進め、外国企業の投資誘致にも力を入れてきた。だが、日本企業の過去の失敗を振り返ると、インド市場で成功することの困難さが浮かび上がる。

 一方、そのインドで40年以上にわたって成功を収めてきた日本企業がある。いわずもがな、スズキである。なぜ日本を代表する大企業がインドでつまずく一方、鈴木修氏が率いたスズキは巨大な自動車事業を築くことができたのか。

 その違いを考えることが、これからのインド投資を成功させる大きなヒントになるはずだ。