NTTドコモが直面した「契約しても撤退できない」問題
インド投資の難しさを象徴するのが、NTTドコモの事例だ。
2009年、ドコモはインドの巨大財閥タタ・グループ傘下の通信会社タタ・テレサービシズに約2523億円を出資し(2011年に約144億円を追加)、26.5%の株式を取得した。
携帯電話市場の成長が期待されるインドで、日本の通信技術やiモード、経営ノウハウなどを生かす計画だった。当時、携帯電話の覇権をどこが握るかはまだ決まっておらず、ドコモのインド進出には国家的な期待がかかっていた。
だが、インド事業は期待した成果を上げられなかった。ドコモは2014年に撤退を決断したが、問題はそれにとどまらなかった。
ドコモは出資時から撤退条件を契約に盛り込んでいた。一定の業績目標を達成できなかった場合、取得価格の50%か公正価値のいずれか高い価格で株式を売却できるよう、タタ側に買い手の仲介を求める権利を確保していたのだ。
ところが、この出口戦略がインドの外国為替規制と衝突した。インドの外国為替管理法(FEMA)と関連規制では、外国投資家による株式売却価格などに制約が設けられている。外国企業が契約で定めた条件を、そのまま実行できるとは限らない。
両者の争いは国際仲裁に発展した。ドコモは2017年、デリー高等裁判所の執行判決に基づき、約1449億円の仲裁裁定金を受領して撤退した。
注目すべきは、ドコモが事前に撤退条件を用意していたのに、巨額の紛争に巻き込まれた点だ。インドでは契約書を作成するだけでは足りず、その契約が現地法の下で実際に履行できるかまで確認しなければならないのだ。
第一三共が買収したインド大手製薬会社の深刻な問題
もう一つ、日本企業にとって教訓となるのが、第一三共によるランバクシー買収である。
2008年、第一三共はインドの製薬大手ランバクシー・ラボラトリーズの株式約64%を約5000億円で取得した。狙いは、新薬を中心とする自社事業に、ジェネリック医薬品と新興国市場を加えることだった。
ランバクシーは世界各国に事業を展開しており、成長市場への参入を急ぐ第一三共にとって魅力的な買収先だった。







