1998年に和解が成立し、スズキは2002年に過半数の株式を取得してマルチ・ウドヨグを子会社化し、経営権を固めた。

 政府と協力するが、経営の自主性まで政府に委ねない。その揺るぎないスタンスが、スズキを成功へと導いたのである。

 2025年11月、スズキはインド国内の四輪車累計販売台数3000万台を達成した。

図表:スズキ、インドで四輪車累計販売台数の推移(1983年~2025年)
画像:Diamond ※AIで作成 拡大画像表示

 中国に代わる投資先としてインドが脚光を浴びるはるか以前から、スズキはインドの国民生活に不可欠な自動車メーカーとなっていた。

「メイク・イン・インディア」は成功の条件か

 インド政府が掲げる産業政策「メイク・イン・インディア」は2014年に始まった。外国企業の投資を呼び込みながら、インド国内の製造業を発展させ、雇用を創出することを目的としている。

 インド政府は生産連動型優遇策(PLI)を導入し、電子機器や自動車などの重点産業に補助金を投入してきた。アップルのiPhone生産拡大も、こうした政策と密接に関係している(参考「アップルがiPhoneをインドで生産、それでも「中国の代わり」になれない理由」)。

 インド国内でiPhoneを製造するのは主に受託製造企業であり、政府は一定の条件を満たした生産活動に奨励金を支給している。政府が収益や投資元本を保証したわけではないが、政策支援であることは確かだ。

 その携帯電話向けPLIは2026年3月に期限を迎えた。同年7月には、国内での部品調達や研究開発を重視する後継制度が承認されている。ここにインド投資を考えるうえで重要な視点がある。

 インド政府が求めているのは、外国企業が国内生産を拡大し、部品産業を育成し、雇用を増やし、輸出競争力を高めることである。

 インド政府がこれほど強気な条件を突きつけられるのは、米中対立とサプライチェーン分断のなかで、西側企業にとって「次の中国」となり得る有力な選択肢は自国しかないと見て、外国企業の足元を見透かし、自国に「得を取ろう」としているからだろう。

 スズキは「メイク・イン・インディア」という言葉が生まれる30年以上前から、結果としてその方向に沿った事業を展開してきた。