1.1ポイントもの差はどこから?
総務省の数字は間違いではない

 総務省が公表するCPI(消費者物価指数)は、家計が購入する財・サービスについて、一定の消費構造の下で必要となる費用が価格変動によってどの程度、変化したかを示すものだ。

 この数字は、政府が物価対策で補助金を出すようになっても、決して間違いではない。

 例えば、本来1万円の電気料金が政府補助によって9000円になったのであれば、家計が実際に支払うのは9000円である。生活費がどれだけ増えたか、実質賃金や家計の購買力がどう変化したかを考えるのであれば、補助後の価格を反映した公表CPIを使うべきだ。

 したがって、「補助金がなければ物価はもっと高かったから、公表CPIは偽りの物価だ」と考えるのは誤りだ。公表CPIは、生活者が現実に直面している物価を正しく表している。

 一方で、日銀の「消費者物価のコア指標」は、総務省の公表CPIから「特殊要因」の影響を除いた物価上昇率を試算し、毎月公表するものだ。

 特殊要因としては消費税率の変更、教育無償化政策、2021年の携帯電話料金引き下げ、旅行支援策がある。これらに加えて、ガソリンや電気・ガス代等の負担緩和策が含まれている。

 いまの日本では、ガソリンなどに補助金が出されているので、総務省が発表する消費者物価指数(補助金の影響を含む)の上昇率は、補助金がなかった場合に比べて低くなる。

 日銀は、この問題を認識し、総務省の調査で実際に観測されるCPIと、一時的な制度・政策要因を除いた場合の物価を区別する必要性を考えているのだ。

だが「CPI上昇率がほぼ2%だから」
「インフレは収束した」とはいえない

 物価高への対応を考えるうえでは、この違いを認識することが重要だ。

 政府が補助金を出したため消費者の支払いが抑えられたからといって、日本経済全体が直面するインフレ圧力が弱まったわけではないからだ。

 補助金によって消費者価格が下がっても、そのことは原油や天然ガスの輸入価格、発電コスト、輸送コストなど、価格形成の基礎となるコストが低下したことを意味しない。

 価格上昇圧力が消えたのではなく、その一部を政府が財政によって肩代わりしているだけなのだ。

 この場合、公表CPIが低下しても、日本経済に存在する基礎的なインフレ圧力までが同じように低下したとはいえない。

 だから、総務省公表CPIだけ見ていると、判断を誤る危険がある。

 26年9月の全国CPI上昇率は2.1%であり、ほぼ目標とする2%になっている。しかし、この数字だけからインフレが収束したと判断することはできない。

 なぜなら、政府のガソリン、電気、ガス料金への負担軽減策は、消費者が支払う価格を実際に引き下げるものの、需要の減少や生産性向上によって生じる物価低下ではないからだ。ここに現在の問題の核心がある。

 補助が終了すれば、その時点で基礎となる価格(原油価格など)が高いままである限り、消費者価格は再び上昇する可能性がある。