トヨタの“顔”は誰か――。今、日本人にこの問いを投げかけたならば、十中八九、豊田章男社長との答えが返ってくるだろう。だが、米国では、豊田社長はフォード創業家のビル・フォード会長のような“濃厚な”存在ではなく、トヨタの顔といえば、まさにそのトップの顔の見えない―今回のリコール問題までは品質が神格化されていた―プロダクト自体だった。それでも敢えて人の名を挙げるならば、営業マーケティング部隊を率いる米国トヨタ販売(TMS)のジム・レンツ社長、そしてTMSで「トヨタ」ブランドのトップを務めるボブ・カーター副社長だろう。TMSの上部組織である北米統括会社(TMA)の日本人首脳は黒子に徹し、米国一般社会においてその存在感は薄い。米下院公聴会に出席することで、豊田社長が会社の顔として米国民の目に焼きつくかもしれないが、今後もメディアを通じて米国民に日々語りかけるのが米国人幹部であることに変わりはない。では、彼ら米国人幹部は、今回のリコール騒動をいったいどう自国民に説明しているのだろうか。そこに過ちやおごり、説明責任の不履行はないのか。トヨタ・バッシング(叩き)の震源地に立つトヨタ米国人幹部への、米国人ジャーナリストによる“米国視点”の貴重なインタビューをお届けしよう(聞き手/ジャーナリスト ポール・アイゼンスタイン、翻訳/ダイヤモンド・オンライン副編集長 麻生祐司)

ボブ・カーター 北米トヨタ販売ゼネラルマネジャー
ボブ・カーター 米国トヨタ自動車販売(TMS) グループ副社長兼ゼネラルマネジャー

―あなたは、トヨタがアクセルペダルにフロアマットが引っかかる可能性があるとして米国で400万台超の自主改修を発表した11月の時点で、私に対して、「これで問題は解決した!」と語っていた。しかしその後も、アクセルベダル部品に欠陥があると認めた1月のリコール、そして2月の新型「プリウス」のリコールと問題は続いている。いったい何が起きているのか?

 そうした経緯が、会社のクレディビリティ(信用)を損ねたことは理解している。確かに、私はかつてあなたの前でそう話した張本人だ。その後起きたことを考えれば、私の個人的なクレディビリティの一部分も吹き飛んでしまった。

 ただ、何かが起きることを知っていたのに黙っていたわけでは決してないことをここで強くお伝えしておきたい。

―しかし、あなたの発言はさておき、対策が小出しにされてきた結果、世間において「次があるのでは?」「トヨタはまだ何かを隠しているのでは?」との不信感が高まるのは、自動車業界を長年取材してきた私から見ても、避けがたい展開だ。中でも、アクセルが戻りにくくなる原因が加減速を制御する電子制御スロットルシステムの欠陥にあるのではという見方が広がっていることに対して、何か言いたいことはあるか。