オバマのおばあちゃんに届いた、鎌倉のスリッパ
――日本で生まれたアイデアが、ケニアの産業になる

 ケニアのファブラボから来たメールは、「レザースリッパのつくり方を教えてくれないか?」という内容だった。

 ケニアの西部、ビクトリア湖沿岸の町キスム(Kisumu)にあるアローファブラボ(ARO Fablab)は、運営が上手くいかず困っているという。彼らは、スリッパを製造・販売することで、収益源の一つにできないかと考えていた。

 ケニアからの提案の背景には、ファブラボの持つ「オープンソース」の文化がある。つくる知識を共有・交換することにより、一つの設計図から、より多くのアイデアを派生させようという考えだ。

「すごくいい取り組みだと思いました」

 藤本さんたちは設計図の提供を即決する。

ケニア風にアレンジされたクルスカサンダル
※クルスカのロゴも入った底面の画像はこちら

 鎌倉の革職人が生んだスリッパのデザインは、インターネットを介してケニアに送信され、現地でみるみるカスタマイズされていった。スリッパはつま先が見えるサンダルとなり(なにしろ暑い国だ)、大地のひび割れをあらわした模様が底面にかたどられた。素材には、現地で手に入りやすいフィッシュレザーが選ばれた。世界最大の食用魚、ナイルパーチの革が利用されている。魚の革を縫うのは、テグスだ。

 変わらないものは一つ。クルスカのロゴマークである。藤本さんたちは、ファブラボ鎌倉からの提案で「クリエイティブ・コモンズ・ライセンス」を利用し、常にロゴを載せることを条件にした。

 2013年4月、キスムの北西にあるコゲロ(Kogelo)村に住む90歳の女性に、アローファブラボでつくられた特製のサンダルが贈られた。彼女の名前はサラ・オバマ。アメリカ合衆国大統領の祖母である。孫の顔が刻印されたサンダルを手に取った彼女は、とても嬉しそうにしていたそうだ。もちろん、そのサンダルにもクルスカのロゴが刻まれている。

特製スリッパを受け取って喜ぶサラ・オバマ
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