職場で悶える会社員らの話は、連載第2回第3回第5回で取り上げた。今回は、そのような社員たちから相談を受ける弁護士を紹介したい。自死遺族支援弁護団の和泉貴士(八王子合同法律事務所)さんである。

 和泉さんは、自らの母親を自死(自殺)で亡くしたこともあり、自死を始め過労死、パワハラ、いじめなどの解決に向けて積極的に取り組んでいる。

 これまでも指摘したように、ブラック企業の職場には社員を精神的に悶えさせる構造がある。社員が過大な業務や成果を要求され、競争が激化している職場環境を、「グローバル化の時代だから仕方ない」などという理屈で覆い隠すことには無理がある。その構造的な問題の真相に迫りたい。

 取材の模様をより正確に伝えるため、今回も筆者と和泉弁護士とのインタビュー形式でお伝えする。


会社員はなぜ自ら死を選ぶのか――。
自死遺族に寄り添う人権派弁護士の証言

弁護士の和泉貴士さん。八王子合同法律事務所にて

筆者 日本の職場では、上司などとの距離の取り方が上手く、要領のいい社員が浮かばれ、コミュニケーションなどが不器用な社員は潰れていく傾向があるように思います。中には精神疾患になり、死を選ぶ会社員もいると聞きます。

和泉 「正直者がバカを見る」という構図は、確かにあるように思う。私がここ数年の間に受けた相談について言えば、月の残業時間が160~200時間になっていた社員(正社員)が数人いた。

 彼らの多くは、メーカーやIT系企業で働いていた。20代もいれば、50代もいた。いずれも遺族からの相談だった。本人たちは超長時間労働などの影響で精神疾患になり、死を選んでいた。