気鋭のベンチャーキャピタリストが、スタートアップのための戦略論を説く連載の第5回。事業ドメインの設定において考慮すべき3つ要素のうち、「1.市場性」を前回解説しましたが、今回は「2.競争環境」と「3.自社適合性」について見ていきましょう。
競争環境:競争優位性を考え続ける
ドメイン設定を考える際に、競争環境の観点では、競合に対して、明確かつ持続可能な競争優位を築くことができる領域かどうかという視点が重要になってきます。
まずは、“競合”が誰であるかを正しく把握する必要があります。競合というと、同様の事業を展開する直接競合をイメージしがちですが、代替品も含めた同じ価値を提供する商品・サービスのすべてを競合と認識する必要があります。
インターネット上で、仕事を依頼したい企業とフリーランサーとをマッチングするクラウドソーシングと言われるサービスの例で考えてみます。クラウドソーシングのドメインは今ホットな領域で、米国では最大手のoDesk上では2012年ですでに360億円もの取引が行なわれています。
日本でも何社かクラウドソーシング企業はあり、その間での競争はもちろんありますが、この業界の場合、業務委託やアウトソーシングも競合と捉える必要があり、さらにより本質的には、「企業が内部の人員での業務を遂行すること」が一番の競合となります。
クラウドソーシング企業にとって、どうすれば業務委託やアウトソーシングから仕事を奪うことができるか、そして企業が今までは内部で行なっていた業務をどのようにすればクラウドソーシングに外注するようになるかを考える必要があります。