「ビジョン」と対となる「戦略」は、まずドメイン(事業領域)の決定からはじめることになります。一番オイシイのはどんな市場か? ビジョンとドメインがそぐわなかったらどうするか? 今回は具体的なドメインの設定方法を、実際の投資先の実例とともに解説します。

ビジョンと戦略の関係性

 ビジョンが自分たちがどこに至りたいのか、どうありたいのかというゴールの大きな方向感を指し示す羅針盤だとすると、戦略はそのゴールに向かってどのように到達するかという具体的な道順です。ゴールに向かって、もっとも早く、もっと確実に、もっと効率的に到達する術を決めるのが戦略なのです。

 ビジョンが組織内で皆が共有する、限りなく普遍的な到達点であるのに対して、戦略はユーザや市場などの外部環境や自分たちのケーパビリティ(能力)の獲得に合わせて常に変化するものです。

 ここからは、どのように戦略を決定するかについて話をしていきたいと思います。

ドメインを設定するための3要素

 戦略を策定するうえでまず決めるべきは、事業ドメイン(事業領域)の設定です。「事業ドメインを設定する」と言うと「なるほど。たしかに戦略論としては……」などと難しく考えてしまうかもしれませんが、よく考えてみると「ゴールを達成するために何をするかをまず決める」というのは極めて当り前です。

 「スポーツで世界一を取りたい!」と言ったときに、サッカーをやるのか野球をやるのか、はたまたカバディをやるのかをまず決めるとの同様、「モバイルというインターネットの新しい形で社会を変えたい」と言ったときに、モバイルのゲームをやるのかECをやるのか、はたまたSMSベースの送金サービスをやるのかを決める必要があります。

 サッカーのような人気スポーツで世界一になったときには、手に入れられるものが多くなります。また日本国内の競技人口からみても選手を確保しやすいという利点があります。一方で、南米やヨーロッパには強豪国がひしめいており、世界一になるには相当厳しい競争を勝ち抜かなくてはなりません。

 他方でカバディの場合、日本国内の競技人口が少なく選手の確保は難しいですが、日本国内での競争は他の競技に比べて緩く、日本代表にはなりやすいかもしれません。ただし、世界一になるためには本家本元のインドに勝つ必要がありますし、世界一になってもカバディが盛んな一部の南アジア地域でしか認知されないかもしれません。