旅行ビジネスで70歳以上の高齢者を無視するな!

 もうひとつ別の事例を挙げましょう。

 参議院選挙の投票日だった2013年7月21日に、NHKのニュースが「60歳代の国内観光旅行」についての特集を放送していました。国内観光旅行の回数が年々減っている要因として、年代別でいちばん旅行に行っている60歳代での減少を挙げ、旅行ビジネスをおこなう企業側の対策を紹介したものでした。

 このニュースもまた、無視すべきでない高齢者を無視しています。60歳代とそれより若い年齢層には注目しているのですが、70歳以上の高齢者を忘れています。旅行関連のビジネスを語るなら、それが不適切であることは、図表3からわかります。

 総務省の調査に基づいて、世帯主の年齢別で「パック旅行費(国内)」への支出を比較しています。また、参考として「パック旅行費(外国)」への支出もグラフ化しています。世帯主70歳以上の世帯でのパック旅行費(国内)への支出は、世帯主60歳未満の世帯よりずっと大きい。しかも、70歳以上の人口は60歳代の人口よりも多い。

 つまり、60歳未満の人たちには注目したうえで、70歳以上の高齢者を無視したデータを示しながら旅行ビジネスについて論じるのは、データの扱いが不適切だといえます。ニュースの全体的な内容を考えると、おそらく、団塊の世代にスポットを当てる前提で取材をしたうえで、それを正当化するデータを最初に示したように感じられました。