読者自らがステップを追って身につける
実践的な思考と市場均衡の論理

 第1章では帰納法と演繹法、三段論法、集合、背理法、データのバイアスなどが説明され、初歩のロジカル・シンキングをたたきこまれます。

 第2章で、専門家の文章などを読むビジネス・パーソンが身につけるべき経済学の論点を3つのステップにまとめています。

1. 論理に照合
2. 「経済学思考の基本ルール10」に則っているか
3. データによる確認
(60ページ)

日本が進むべき道は10年前に説かれていた!<br />数学不要の「経済学思考」のトレーニングブック記事中に引用している3つのステップ。その前提として「ビジネス・パーソンに求められている経済学」も示されています。
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 世間の言説を3つの関門を通してチェックする技術が必要だというわけです。実際にさまざまな記事や論文を読みながら試すと、非常に実践的な思考の訓練となります。ぜひお試しを。

 第3章にはいよいよ「現実経済を理解するための経済理論」がまとめられています。まず、「経済学の思考ステップ」を5段階にして掲げます。

1. 現実を単純化し
2. 状況を設定し
3. その枠内で論理的で考え
4. 総合する
5. 現実的妥当性をデータから確かめる
(102ページ)

 そして読者を需要と供給の一致、すなわち市場均衡の世界へ誘います。ここでは、需要曲線と供給曲線の均衡を学習するというより、読者が市場均衡の論理を一から作り上げる手助けをしてくれます。ただ覚えるだけよりも身に付きますね。

 第3章の最後は「複数均衡」が出現する収穫逓増の市場で、「期待」の自己実現を説明してくれます。実はかなり高度な経済学ですが、読者を最新の理論まで導いてくれるわけです。「期待に働きかける」とは、現在の日銀総裁の言葉でもあることを思い出してください。

 第3章補論ではデータの扱い方を学びます。「原則10」にあるように、「グロスとネット」「名目と実質」の違いと重要性を頭に入れます。