3.コカイン以上の依存性がある

 続いて、コカインより強烈といわれる「依存性」についてです。

 まず、私たちの身体に快感がどのように伝わるのか、簡単に説明しておきましょう。

 私たちが美味しい物を口にすると、ドーパミンなどの神経伝達物質が分泌され、満足感を得ます。そして「もっとたべたい」と思います。私たちが食べものから身体にエネルギーを取り込む際、その調節に重要な役割を果たしている神経系を「脳内報酬系」と呼びます。脳内報酬系は「快楽中枢」とも呼ばれ、自分へのご褒美を与える神経システムなのです。

 ところが、「もっとたべたい」という欲求が強くなりすぎると、喜びがコントロールできなくなり、習慣化、乱用、依存、そして中毒へ移行していきます。このときカギとなるのがドーパミンです。さて、ドーパミンは、一体どのように作用しているのでしょうか。

 そもそもドーパミンは、いつも出ているわけではありません。私たちが日常生活で何か行動し始めるとき、ドーパミンが分泌されます。背景には、私たちが今まで連続して学習してきたことによる動機づけがあります。例えば、あなたが朝起きてから夜寝るまでの行動を考えてみて下さい。朝の洗顔、歯磨き、朝食など、あなたが子どものころから学習してきて、習慣となっているすべての行動に動機があり、いつもドーパミンが働いています。

 また、私たちの何らかの行動によって脳が感動や喜びを覚えたときもドーパミンが分泌され、私たちに快楽をもたらします。例えば、映画、スポーツや音楽などに強く感動したときに、脳内でドーパミンは分泌されます。

 ところが、そういった快楽だけを欲した状態が続くと、ドーパミンの分泌をコントロールできなくなり、依存症や中毒になります。コカインなど覚醒剤による薬物依存症は、このドーパミンに関係しています。薬物を投与するとドーパミンが分泌され、快感や満足感が得られます。ドーパミンが枯渇すると、また薬物が欲しくなります。こうして薬物に対する依存症となるのです。

 それでは、食欲にはドーパミンがどのように関与しているのでしょうか?

 食事を始めると、私たちの体内ではドーパミンが分泌され、食欲が増します。そのうち、連続した学習により、食べものを想像するだけでドーパミンが分泌されるようになります。例えば、食べもののテレビCMや写真、料理の音やにおいを感知しただけでもドーパミンが分泌され、食欲が増進するわけです。こうして、私たちは、食生活を楽しんでいます。

 ところが、食事に対する「快楽」への欲望が強く執着した状態では、ドーパミンが過剰に分泌されるようになります。したがって、薬物依存症と同じように、大量のドーパミンで過食に走ります。過食により、一時的な快感や興奮、満足感が得られますが、その快感はすぐに効果がなくなり、再び暴飲暴食に走ります。そのうちに食欲に対するバランスが崩れてコントロールできなくなり、食べもの依存症や中毒に陥ります。

 前置きが長くなりましたが、最近、砂糖や人工甘味料の甘さが、脳内報酬系やドーパミンなどの神経伝達物質に影響を与えて、依存症や中毒に導くこともわかってきました。