病気やケガは、収入の多少に関係なく
誰にでも突然やってくるもの
例外を設けずに、この国で暮らすすべての人が健康保険に加入すれば、みんなが少しずつ保険料を負担するだけでも、たくさんのお金を集められ、スケールメリットが生まれます。病気やケガは、高所得なのか低所得なのかといったことに関係なく、ある日突然やってくるものなので、みんなが健康保険に入りやすくするために、原則的に保険料はその人の収入に応じて支払う応能負担(おうのうふたん)という方法がとられています。
国の運営による健康保険は、民間の保険会社のように株主に配当を支払うために利益を出す必要がありません。集めた保険料のほとんどは、病気やケガを治す医療費に回せるので、公的な健康保険の仕組みは医療経済的に見ても効率がよいのです。
このような制度があるおかげで、重い病気を患った人だけに経済的リスクが集中することはなく、たくさん医療費がかかっても、「いつでも、どこでも、だれでも」少ない自己負担で治療を受けられるようになったのです。
健康保険は、誰でも病気やケガの治療ができて、貧困に陥ることを予防するという個人の問題を解決できるだけではありません。健康で社会活動に参加する人が増えれば、物を買ったり、出かけたりする人も増えるので、経済の需要が生み出されます。それが企業の利益にもつながり、労働者の雇用も増えるというプラスの循環が生まれます。
日本が、戦後、急激に経済成長を遂げた背景には、国民皆保険が整備されたことも無関係ではないでしょう。
健康保険はこうしたメリットがあるのですが、中には「自分は健康なのに、なぜ病気の人のために健康保険料を払わなければいけないのか」と不満に思う人もいるようです。でも、保険とは万一のときに必要な保障を受けるために、ふだんから保険料を払っておくものです。何もなければ掛け捨てになりますが、それはとても幸せなことなのです。
持ち家の人の多くは火災保険に加入しているはずですが、保険料を払っているからといって「火事にならなくて損をした」と思う人はいないでしょう。たとえ保険金を受け取れなくても、火事にならないほうが何倍も幸せだからです。
健康保険もそれと同じです。たとえ、保険料を負担するだけで医療費を使う機会がなくても、病気で辛い思いをするより、健康でいられるほうが幸せだとは思いませんか。
前ドイツ連邦副議長のアイティエ・フォルマー氏は「その社会の質は、もっとも弱い人がどのように扱われるかで決定する」と言いました。弱者を見捨てれば、それは形を変えて自分自身に跳ね返ってきます。「情けは人の為ならず」という言葉もあります。今は健康で医療は必要ないと思っていても、ふだんから保険料を負担し、医療の供給制度を支えておくことは、いざというときの自分のためにもなるのです。
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