知っている人だけがトクをする医療費節約の裏ワザ。世界を見渡すと日本より医療費が高い国は多いものです。人気ナンバー1のハワイでは、虫垂炎の手術が200万円かかることも!ちなみに日本では高額療養費(第1回参照)があるため、9万円未満。また国民全員が加入している公的な健康保険に「海外療養費」という制度があるために、申請すれば一部が補助されます。
これから年末の海外旅行で手痛い出費にならないために、知っておきたい現実をご紹介。そして、いかに日本の健康保険がすごいのかもわかります!
(※この記事は『読むだけで200万円節約できる! 医療費と医療保険&介護保険のトクする裏ワザ30』から抜粋です)

健康保険には渡航先での病気やケガで使える
「海外療養費」という制度がある!

 健康保険は日本の制度なので、外国で日本の保険証を見せても健康保険は使えません。海外旅行先などで病気やケガをして、現地の医療機関を受診した場合は、かかった医療費の全額を自己負担することになります。

 ただし、健康保険には海外療養費という制度があり、帰国後に申請すれば現地の医療機関に支払った医療費の一部を給付してもらえます。

 まず、外国の医療機関で受けた治療と同様のものを日本で受けたと仮定して医療費を割り出します。これと外国での医療費を比較して、どちらか低いほうの自己負担分をのぞいた金額を払い戻してもらえます。

 たとえば、3割負担の人が現地の病院に円換算で10万円の医療費を支払ったとしても、同様の治療が日本では5万円だった場合は、健康保険から給付してもらえるのは5万円の7割(3万5000円)になります。また、現地の医療費が円換算で2万5000円、同様の治療が日本では5万円だった場合は1万7500円が給付されます。

 海外療養費の請求には、診療内容の分かる書類、領収書(明細書)が必要になるので、海外旅行先で医療機関を受診した場合は必ずもらっておきましょう。帰国後に、診療内容証明書と領収書に日本語の翻訳をつけて、加入している健康保険に提出すると、おおむね2ヵ月後に払い戻してくれます。

 ただし、移植手術や不妊治療などで最初から治療目的で海外に行った場合は海外療養費の対象にはなりません。美容整形、性転換手術、歯列矯正なども対象外です。また、差額ベッド料、先進医療の技術料、自然分娩の費用など日本でも健康保険がきかないものは認められません。

 日本より医療費が高い国は多いため、海外療養費だけではカバーしきれないケースは多々あります。夏休みの海外旅行で友人たちとハワイに行ったLさんは、急にお腹が痛みだして、現地の病院を受診。虫垂炎と診断され、緊急手術を受けました。手術は無事に終わって3日後に退院できたのですが、会計時に約200万円の医療費を請求されたのです。

「クレジットカードに海外旅行傷害保険が自動付帯されていたのですが、医療補償額は上限50万円までだったんです。これではカバーできず、手痛い出費になりました」

日本で虫垂炎の手術をした場合、医療費の総額は48万円程度ですが、健康保険の高額療養費の対象にもなるので、自己負担額は約9万円です。Lさんは日本に帰ってから海外療養費の申請をしましたが、健康保険から給付されたのは39万円。カードの海外旅行傷害保険で補償された50万円を差し引いても111万円の出費になりました。

 Lさんのように、外国で高額な医療費を請求されることは珍しいことではありません。旅行会社のJTBの「2011年度海外旅行保険事故データ」によると、「アメリカ旅行中に硬膜下血腫で21日間入院して約2195万円」「中国でくも膜下出血と診断され13日間入院して約2000万円」など、桁違いに高い医療費のケースが紹介されています。外国で病気やケガをすると、医療費の他にストレッチャーでの搬送費用、日本からの家族の渡航費用などがかかることもあり、健康保険の海外療養費ではカバーしきれない可能性が高いのです。

 そこで考えたいのが民間の海外旅行傷害保険への加入です。

 クレジットカードに自動付帯されている海外旅行傷害保険は、「最大2000万円まで補償」などと謳われています。でも、これは死亡時にもらえるお金で、肝心の医療保障は50万~300万円程度がほとんど。外国での高額な医療費を考えると心細い金額なので、単体の保険にも加入を。インターネットで加入する損保ジャパンの「新・海外旅行保険off!」など、必要な補償だけ自分で選べる商品を利用すれば、セット商品よりも保険料の節約ができます。数千円の保険料をケチったために、数千万円の支払いに苦しまなくて済むように、海外旅行に行く前には海外旅行傷害保険の加入を検討しましょう。