PQ脳の筋力強化法
上腕二頭筋を強化するには繰り返しダンベルを上げなければいけない。PQ脳でダンベルに当たるのは、自分の身体や五感に注意を集中し、これを少なくとも10秒以上続けるエクササイズである。ジムでやるのと同じ、PQ脳にとっての反復運動(レップ)である。
この簡単な反復運動を行うにはPQ脳の筋力が必要なので、結果的に筋力が活性化され、強化される。例えばぼんやり考えごとをするのをやめ、身体の感覚に意識を集中させるには、PQ脳のなかでもMPFC(前頭前皮質内側部)と右脳を働かせなければならない。多くの研究により、身体的知覚に注意を集中することと、PQ脳の諸領域を活性化させることは関連があることがわかっている。
これらの研究では、脳のエクササイズによって新たな神経経路が形成されて脳の回路が恒久的につくりかえられ、エクササイズをしていないときでも活性化が持続することもわかっている。つまりジムに行かなくなっても、ずっと筋力が維持されるのと同じことである。
多くの専門家が、健康を保つには毎日1万歩あるくよう勧めている。PQ脳で同じことをするには、PQ脳の反復運動を毎日100回行うこと。つまり身体や五感のいずれかに可能なかぎり注意を集中させ、これを10秒間続ける、これを毎日100回行うのである。正確に時間を測る必要はない。10秒はおおむね呼吸3回分に相当する。
日々の生活にはPQ脳の反復運動を行うチャンスはいくらでもある。例えばこの記事を読んでいる間、あなたは自分の体のことはすっかり忘れ、ほとんどの時間を頭を使って考えごとをしていたのではないだろうか。だから今、記事を読みながら10秒間(呼吸3回分)、椅子にかかった身体の重みを感じてみよう。あるいは手に持った本の温度、感触、重みを感じてみよう。呼吸を数回する間、呼吸に意識を集中し、胸やおなかがどう膨らんだりしぼんだりするかを意識してもよい。
あるいは読みながら、聞こえてくるすべての音に耳をすませてみよう。これだけで、毎日のノルマ100回という目標に向けて、少しずつ回数を重ねていけるだろう。
PQ脳の筋力強化は決して難しくないことがわかっていただけたと思う。ほんの少し練習すればいい。ボディビルの本をいくら読んでも二頭筋が鍛えられないように、いろいろな概念について考えたり、読んだり、話し合ったりするだけではPQ脳は鍛えられない。反復運動が必要なのだ。毎日の活動を利用してPQ脳の反復運動を行う方法を、さらにいくつかご紹介しよう。