妨害者の力を弱める方法
妨害者を弱める、賢者を強める、PQ脳の筋力を強化するという3つの方法には、いずれも数秒以内で実行できるさまざまなテクニックが用意されていて、仕事や家庭の忙しいスケジュールの中でも実行できる。人によってどの方法を選ぶかはさまざまであり、各自が最も有効と感じられる方法を見つけてほしい。一番お気に入りの方法が見つかったら、あとの二つも自動的に使えるようになるはずだ。ここでは妨害者の力を弱める方法を紹介しよう。
内なる妨害者を弱らせるコツは、彼らと闘わないこと。少なくとも一般に考えられるような闘い方はいけない。犠牲者、八方美人、移り気などの妨害者が現れたとき、いらいらしたり腹を立てたりしたらどうなるだろう。それは妨害者を「裁く」ことであり、妨害者のボスである裁判官を刺激し、強めてしまうことになる。
妨害者を弱める最も効果的な方法は、ともかく冷静に観察し、妨害者の生み出す思考や感情に一つひとつラベルを貼っていくことだ。ベストセラーの著者エックハルト・トールは、この現象を巧みなたとえを使って説明している。トールは妨害者をひっくるめて「エゴな心」と呼ぶ。それは自覚的な意識の光のもとで溶けてしまう、巨大な雪だるまのようなものだ。妨害者の力を弱める作業の大半は、妨害者が現れるたびにひたすら観察し、ラベルを貼ることによって、意識の強い光にさらすことによってなされる。
妨害者をよりよく観察し、ラベル付けするには、自分なりの命名法や定義を考えるとよい。例えば私は裁判官を「死刑執行人」、理屈屋を「ロボット」と呼んでいる。裁判官を「ダースベイダー」と呼んでいる人、潔癖性を「除菌マニア」、仕切り屋を「鬼軍曹」、優等生を「仕事人間」、犠牲者を「悲劇のヒロイン」と呼んでいる人もいる。これで要領はおわかりだろう。
さて、あなたの最も強力な妨害者が「仕切り屋」で、これを「鬼軍曹」と名づけたとしよう。そして会議中に、このおなじみの「仕切り屋」が姿を現したとしよう。そこで、「鬼軍曹は自分のやり方でないとダメと言っている」などと、その思考にラベル付けをする。あるいは、そのとき自分の中に起こった感情を観察してラベル付けしてもよい。「鬼軍曹は不安になり、会議が自分の思いどおり運んでいないと怒っている」というように。こうした作業はすべて心の中で行う。時間も労力もほとんどかからない。パスポートにスタンプ押すように、あっというまにできる。
観察・ラベル付けという単純な作業で、本当に自分を変えられるのかと思う方もいるかもしれない。それは可能である。なぜなら妨害者とは本来、味方を装ったり分身のようにふるまったりして、正体を見破られずに活動するときに最も破壊力をもつからだ。観察とラベル付けはそんな仮面をはぎとり、その言葉のウソをあばく。「自分にはできない」と「自分にはできないと裁判官が言っている」の違いを知ってほしい。雪だるまはあなたの意識という光のもとで溶けるのである。
本書の7章では、妨害者が出現するたびに10秒間のPQ脳活性化エクササイズを行うというテクニックも紹介する。こうすることで妨害者を生み出す脳の部位を沈静化できるので、妨害者の力をいっそう弱めることができる。