「決められない政治」が米国に伝染
ねじれ現象と大統領の指導力低下
足もとで、日米の政治情勢に興味深い変化が起きている。政治が決定すべき事項を決められずに先送りを繰り返す様は、わが国政治の最も顕著な特徴、いわば代名詞のようなものだった。ところが、わが国政治の代名詞ともいうべき「決められない政治」が米国に伝染している。
9月30日、米国で与党・民主党が多数を占める上院が、野党・共和党が多数を占める下院で可決された暫定予算案の再修正案を否決した。その背景には、民主党がオバマ政権の最も重要な政策である医療保険改革法(いわゆる“オバマケア”)の一部を、来年1月から1年間延長するとした下院の修正案に反発したことがある。
その結果は、以前から予想されたことで驚くには当たらない。しかし、10月1日から新年度入りしたにもかかわらず、暫定予算案の再修正案が否決されたことで、予算の執行に大きな支障が出ることは避けられない。すでに、国立公園や博物館などの政府機関が閉鎖されている。
一方、わが国の安倍政権は衆参両院で多数を占め、当面国政レベルの選挙がないこともあり、安定した政策運営ができる環境が整いつつある。今回の消費税率の引き上げについても与党内に若干の異論はあるようだが、安倍首相が決断したことの意味は大きい。
少なくとも現在の政治は、苦い政策でも決断できるとの仕組みを持っていることを、国内外に示したことは評価されるべきだ。現在の日米の政治状況を見ると、形勢がやや逆転していると言える。わが国の政治が変わると、社会全体に与えるプラスの影響は小さくないはずだ。
現在、米国の政治情勢が抱える重要な問題は、上下両院でねじれ現象が発生していることだろう。多数決で物事が決まる民主主義のルールの下では、多数派を占める勢力が強力な決定力を持つ。一方、わが国や米国などの主要先進国では、二院政になっているケースが多い。