次期首相の就任が確実視されている民主党の鳩山由紀夫代表が、『ニューヨーク・タイムズ』などに掲載された論文を、「自分は寄稿していない」と発言していることに対し、論文を掲載した外国メディアが困惑している。彼らは契約している配信会社から送られてきた記事を、そのまま掲載しただけだと主張しているからだ。

 問題の論文は鳩山氏が月刊誌『Voice』2009年9月号に寄稿した「私の政治哲学」を翻訳したもので、アジア共通通貨の提唱やアメリカ主導のグローバリゼーション批判など、主に外交政策について鳩山氏の踏み込んだ考え方が示されている。『ニューヨーク・タイムズ』のほか、『クリスチャンサイエンス・モニター』など米国の主要紙に鳩山氏の署名入りで相次いで掲載されたため、多方面で反響を呼んでいる。

 特に論文中に反米的とも受け取れる主張がたびたび登場することもあり、9月1日付けの『ワシントンポスト』は、民主党の外交政策を批判的に論評する記事を掲載するなど、特に米国メディアからの論文に対する風当たりが強い。

 ところが総選挙翌日の8月31日のぶら下がり会見で、『ニューヨーク・タイムズ』に論文を寄稿した理由を記者から問われた鳩山氏が、

 「寄稿はしていません。どこかで勝手に寄稿したという風に書いてありますが、寄稿したわけではありません。『Voice』という雑誌に載ったものをその新聞社が、一部をですね、抜粋をして載せたものだと。そのようであります。したがって、寄稿したという事実はありません」

と言い出したので、話がややこしくなってしまった。

「記事配信」をめぐる認識のズレ

  鳩山氏は、『Voice』に寄稿した論文の全文を読めば、反米的などという印象は受けないはずで、海外メディアの記事がことさらに反米的とも受け取れる部分を抜き出しているために、誤解を招いていると主張するのだ。

 鳩山氏の公設秘書の芳賀大輔氏も、「『ニューヨーク・タイムズ』にも『クリスチャンサイエンス・モニター』にも転載を許可したという事実はいっさい無い」と、無断掲載に対して憤りを隠さない。

 また、日本語のオリジナルの論文を掲載した『Voice』編集部にも、両紙から転載の許可を求める接触はなかったという。『Voice』編集長の中澤直樹氏は、「今日『産経新聞』の記事を見て『ニューヨーク・タイムズ』に転載されたことを初めて知った。『クリスチャンサイエンス・モニター』についてはまったく知らない」と語っている。