工業国イギリスの悩みは、
フランス産の安い穀物
イギリスは農業が弱い国です。寒冷で土地がやせているので、仕方ありません。イギリス料理の貧弱さは、フランス料理の豊かさに対比され、ジョークのネタになるくらいです。イギリスの地主階級にとって、ナポレオン戦争は天の恵みでした。
ナポレオンの大陸封鎖令によって、安くておいしいフランス産の穀物が入ってこなくなったからです。イギリス産穀物の価格はじりじりと高騰を続け、地主は大きな利益を得ました。
しかし、ナポレオンは敗北しました。大陸封鎖令が解除されれば、穀物価格は一気に暴落するでしょう。このことを恐れた地主階級は、議会に働きかけて穀物法を制定させます。穀物価格が一定水準を下回ったときには、穀物輸入を制限するという法律です。自国の農業を守るため、非常に都合のいい法律を作ったわけです。
綿工業の中心都市マンチェスターで織物工場を経営していたコブデンは、この動きに反対します。同業者に呼び掛けて反穀物法同盟という圧力団体を結成しました。