歴史から学ぶ経済のしくみ! 仕事に効く「教養としての世界史」増税、TPP、円安、デフレ、バブル、国債、恐慌etc.歴史の流れを知ることで、「なぜ」「どうして」がスッキリわかる!
『経済は世界史から学べ!』の著者、茂木誠氏に語ってもらいます。
本日のテーマは「ドルの歴史」です。戦争、暗殺、巨大財閥の台頭と、ドルには血塗られた歴史があります。その歴史を知ることで、アメリカ、そして「ドル」という通貨の本質を知ることができるのです。(初出:2013年12月2日)

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通貨をめぐって、
アメリカ国内はもめにもめた!

 日本円を発行するのは日本銀行ですが、ドルを発行する「アメリカ銀行」は存在しません。ドルを発行しているのは、連邦準備制度理事会(FRB)という組織です。FRB成立までの流れを追っていきましょう。

 そこには、戦争、暗殺、巨大財閥の台頭という血塗られた歴史があるのです。

 アメリカでは、植民地時代から各州が独自の通貨を発行していました。日本で考えると、東京と埼玉で違う通貨が流通しているようなものです。

 イギリスからの独立後、初代大統領ワシントンの右腕だったハミルトン財務長官が通貨統一を目指します。合衆国銀行を設立し、統一通貨ドルの発行権を与えたのです。欧州連合(EU)の結成により、欧州各国が統一通貨ユーロを採用したのと同じ流れです。

南北戦争により、アメリカは真っ二つに。
そのとき「ドル」は?

 合衆国銀行の出資金のうち、連邦政府(米国の中央政府)が2割を、残りはニューヨークの金融資本や欧州の国際金融資本が負担しました。

 このため南部諸州を中心に、「北部の金融資本が連邦政府と結託し、各州の自治を脅かしている」という不満が高まり、南部出身のジャクソン大統領は合衆国銀行を閉鎖に追い込みます。

 欧州大陸から5000キロ離れ、モンロー主義を掲げて戦争に巻き込まれることを避けていたアメリカは、軍備も最小限で済み、連邦政府も財源には困らなかったのです。北部と南部の対立は、貿易と奴隷制をめぐってもエスカレート。北部人、リンカーンの大統領当選を機に、南部11州が独立を宣言して南北戦争が勃発します。

 戦費調達のため、リンカーン大統領は政府紙幣の発行を行います。グリーンバックと呼ばれる緑色の財務省紙幣に続いて、政府の統制下にある「ナショナル・バンク」に紙幣発行権を与え、その代わりに国債を引き受けさせました。戦争は北部の勝利に終わりますが、その直後、リンカーンは暗殺されてしまいます。

ロックフェラー、JPモルガン。
巨大財閥が「ドル」を動かす!

 犯人は南部人でしたが、リンカーン政権による通貨発行権の独占に脅威を感じた国際金融資本が、リンカーン暗殺の犯人に資金提供していたのでは、という説もあります。

 南北戦争後のアメリカは、イギリスを抜いて世界最大の工業国となり、ロックフェラー、JPモルガンなどの新興財閥が巨大な力を持ちます。特にモルガン銀行の資金力は金融危機のたびにアメリカを救い、事実上の中央銀行のようになりました。

 その結果、金融資本は政府紙幣に反対し、彼らが保有する金と等価交換される兌換紙幣を発行するシステム(金本位制)の採用を要求しました。1907年の恐慌のあと、モルガン、ロックフェラーら金融資本が中央銀行の設立と出資について合意し、ウィルソン大統領の認可を得て発足したのがFRBです

 FRBの執行機関である理事会のメンバーは大統領が指名しますが、全米12ヵ所に置かれた連邦準備銀行の出資者はすべて民間の金融機関です。これは今も変わりません。株式の大半を日本政府が所有している日本銀行とは、かなり性格が違います。

リンカーンとケネディ。
2人の大統領は、同じ理由で暗殺された?

 通貨発行権をめぐる政府と金融資本との綱引きは、1960年代に再び起こりました。ヴェトナム戦争の戦費と福祉予算の財源捻出のため、ケネディ大統領は大統領令で合衆国紙幣を財務省に発行させたのです。

 ドル紙幣の上部にFederal Reserve Note と書いてあるのがFRB発行の紙幣。UnitedStates Note と書いてあるのが財務省発行の合衆国紙幣です。

 当時、アメリカ国内には2つのドル紙幣が存在していたのです。しかし、このケネディも暗殺され、財務省発行の合衆国紙幣は回収されます。

 ケネディ暗殺の容疑者は多すぎて何ともいえません。リンカーン暗殺との共通性を疑う説もあります。真相は闇の中です。